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告白
【SM 官能小説】

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告白-8

この女がよく小説に書いているではございませんか、去勢願望をいだく男のことを。本気でこの女はマゾの変態男を好んでいるのでございましょうね。マゾの男ほど豊かな麗しい想像力で女性を想い描くことができるものだって……まったく反吐(へど)の出るような気どった言葉でございます。それならあたしはいったいどんな男なのでしょうね。あたしは別に去勢してもらいたいとは思っていなかったのに、刑務所で無理やり去勢されてしまった不能の男です。あたしは、自分がマゾヒストだとは思ってもおりません。ええ、あたしは今すぐにでも、ベッドに縛りつけた丸裸の《 谷 舞子 》という女の尻の穴をまさぐり、浣腸液をたっぷりと注ぎ込み、排泄を抑制して額に汗を滲ませ、恥辱に喘ぎ苦しむ彼女の顔を笑い飛ばしてこう言ってあげます。これぽっちの想像力のない不能の男に、恥辱を晒す気分は、くだらないエロ小説を書いているときよりも、はるかに快感だろうってね。

でも、あなたはきっとあたしが正真正銘のマゾヒストだと思っておられる。あたしもSMクラブの清掃人だったとき、この女の女王様姿に思わず跪いて、ハイヒールの爪先に接吻し、背中に鞭を欲しくなったこともあります。というより正直に言うと、この高慢な女に何か得体のしれない性的な疼きを感じたというべきかもしれません。容赦なく鞭を振りあげる彼女があたしの屈辱を肉体の中からえぐり出し、痛めつけることで、あたしは彼女に自分のすべての欲望を投げ出すことができそうな気がしたからです。そう……《容赦なくあたしの心を虐げる》のです。しかも、彼女は自分で気がつかないうちに平然と、男の心を痛めつけ、嬲りあげ、心の奥底まで残酷に傷つけることに涼しげな快感をいだいているのでございます。


ところで三日前にこの女が電話で誰かと話をしているのを立ち聞きさせていただきました。やっぱりこの女には男がいたのでございます。別にいても不思議ではありません。年増の女としては、さぞかし体が寂しいときがあるでしょう。相手はきっと若くてハンサムな男だとあたしは勝手に想像しております。彼女が書いた小説にでてくるような、端正な顔をした、さわやかで健全な言葉と瑞々しい肉体をもち、優雅な身のこなしとしぐさでこの女を虜にする羨ましいほどのフェロモンを匂わせる美しい男でございましょう。まったく、この女が好みそうな男でございます。もちろん、貧相な小男のジジイのあたしとは比べものにならない男に違いありません。もしもあたしが若かったとしても、おそらくその男の足元にも及ばないのです。女が電話で話をしていた男の空想にふけるほど、あたしは惨めになります。いえいえ、その男を憎悪しているわけではありません。惨めな嫉妬を感じ、自分をどんどん屈辱に晒すことで高められる快感に浸ろうとしているのでございます。

でも、あたしは思うのでございます。この女がいったいどれほどまでに男に自分の心をゆるしているのでしょうか、たとえこの女が男に恋して、肉体をゆるしているとしても、それは彼女にとって《そのときだけの、ただの感情》にすぎず、まさしく《そのときだけの感情の域を超えない肉体》なのでございます。軽薄に移ろうこの女の欺瞞に充ちた感情は、とても気まぐれな自意識であって、ときに冷酷で悪意に充ちているのでございます。彼女の感情は幾重もの殻に包まれ、底が尽きることのなく、男はそんな女の感情に憐れに翻弄(ほんろう)されているにちがいないのでございます。でも少なくともこの女が、恋人だと思っている男に振り向けた気まぐれな感情によって、男はこの女を抱けるのでございます。唇で白い肌をまさぐり、熟れた乳首を吸い、女の仄暗い腿のすき間に男の逞しい腿をまつわりつかせ、悩ましく煙る陰毛を逆なでしながら堅く漲るものを愛情深く彼女の奥深く突きたてて。それは精神と性欲がゆがんだ、不能のあたしがけっしてなすことができないことなのでございます。いや、そもそもこの女はそのような男の健気(けなげ)な官能を欺き、鼻であしらい、小馬鹿(こばか)にし、男に対する残忍で自己愛的な官能にくすぐられることだけを快感としているのですから。

男と女の愛に充ちた無垢の交わりなんて、そこらのガキじゃあるまいし、あなた、本気でそういうことを思っていらっしゃるのでしょうか。まったく精神の翳りのない純粋な性欲を。ああ、あなたは、なんと幸せな人なのでしょう。あたしは、女と交わることはできませんが、目の前にした丸裸の生臭いこの女を眺めながら、彼女の肉の洞窟の生あたたかさと、まるで生木(なまき)からじわじわと滲み出す樹液のように肉襞を濡らす蜜汁の香りを想うだけで血が騒ぎ、疼いてくるのでございます。なぜならこの女がどんな男と、どんなことを囁き合いながら、どんなもので穴を穿(うが)たれ、どんな顔をして高みに達したのか、想いをめぐらすことしかできないわけですから。あたしの股間にぶらさがったものはそそり立つことはありませんから、あたしにできることは、この女の穴の入口を唇で卑屈に愛撫し、涎(よだれ)に塗り込められた舌をとがらせ、せいぜい陰唇の内側をなぞることくらいでしょうか。卑屈に喘ぐような舌で女の肉の合わせ目をいくらつついても彼女の肉奥の体温を掬い取ることはできず、蜜汁が爛れて匂ってくるのを待ちわびる憐れな焦燥だけを味わっているのでございます。そんな自分が惨めで、ねじくれた性欲を感じたとき、あたしはとても屈辱的でありながら、それでも晴れやかな官能に疼くのでございます。


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