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告白
【SM 官能小説】

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告白-4

これほどまでにこの女の肉体というものが自分に迫ってくるものだとは思ってもおりませんでした。ぬめりをもった白くむっちりとした太腿が艶やかな光沢を煌めかせ、肉惑的に腿肌がゆるみ、女が微かに身をよじると陰毛で煙った割れ目が恥の翳りを含んだあわいとなってまどろみ、陰唇の妖艶さを匂い立たせるさまに、あたしは思わず女の股間を覗きこみました。女のしっとりとなびいた陰毛が水母(くらげ)のように揺らぎ、陰部の割れ目はあたしの視線の格好の巣窟となり、視線は肉唇の襞を啄み、つつき、穴の奥へ奥へと潜んでいくのでございます。あたしはこの女の割れ目が男のものを咥えたときのことを想像しました。男好きのする顔をしていますから、きっとひとりやふたり、男がいることだと思います。あたしはつい想い浮かべてしまうのでございます、彼女の肉の合わせ目が男を欲しがり、蜜汁を湿らせ、涎を垂らし、恥ずかしげもなく白い尻を振り、桜色の乳首を逆立たせ、しなやかな背中を大きくのけ反らせ、全身の肌にぬらぬらと体液をにじませながら身を揉み、男のものを肉襞に含んで愉悦に浸る姿を。そのとき、あたしは、まるで蝶がサナギの殻から脱皮するような妖しく生々しい幻夢をみているような、鳥肌がたつような、悪寒を感じたのでございます。でも、男のものが役にたたないあたしはこの女を抱くことはけっしてできないのでございます。あたしはこの女がいったいどんな男に抱かれてきたのか、その男は彼女をどんな風に充たしてきたのか、そのことを考えた瞬間、烈しい嫉妬に襲われるわけでございます。きっと、老いて卑屈なジジイのあたしとは比べものにならないチンチンでこの女を悦ばせることができる男なのでございましょう。でもあたしはそんな男に抱かれて充たされたふりをするこの女が嘘つきの女に見えてしょうがない。少なくともこの女は《男と同等に肩を並べられる女》ではなく、男を支配するか、もしかしたら男に支配されるか、どちらかの女なのでございますから。


あたしが刑務所にいたときのことを少しばかりお話ししましょうか。あたしが逮捕されて入れられた刑務所は特別なところでございました。特別であると申しますのは、あたしが変質的な性犯罪者ということで、そういう囚人を更生させるための刑務所なのでございます。いやいや、あたしは殺人なんて、そんなぶっそうなことができる男ではございませんので冤罪だと信じておりました。警察の取り調べは、連夜、不眠で続けられ、過酷な事情聴取と簡単な精神鑑定だけで、あたしは判決を言い渡されたのでございます。無期懲役の宣告を受けときは、ほんとうに絶望的でございましたね。それが服役して二十年後、殺人については証拠とされた事実に新たな疑義が生じたことから無罪とされ、釈放されたのでございます。実は、あのときのことをよく覚えていないのでございます。老女がいつ死んだのかはわからない、なぜ死んだのかもわからない、ただ、あたしは目の前にいた老女と性交を重ねていたことだけを覚えています。それだけがあたしの記憶にある事実でございます。それなのにあたしは殺人容疑で逮捕されました。状況証拠だけがあるだけで、あたしが女を殺したという確信的な証拠は何もございませんでした。さらに老女の死後も遺体と性的な行為を繰り返していたこと、そして何よりもDNA鑑定の結果、間違いなくあたしが死んだ老女の実の息子であることが問題となったのでございます。事実、あたしはその女を《自分の母親と意識して犯した》ことはまちがいありません。いや、あたしは自分の母親の顔も知らないのですから、たとえあのとき老女があたしに自分が母親だと語ったときはとても信じられなかったのですが、逆にいうと、あたしは老女が自分の母親だと思い込んだからこそ、彼女に性欲をいだき、犯し続けることができたのだと思っております。でも、何度も言いますが、あたしは彼女を殺してはいません。そんなことができるような男ではない臆病者なのです。

何はともあれ、あたしは変質的な性犯罪者というレッテルを貼られ、性的な更生を施す特別の独房に入れられ、女看守に二十四時間、監視されていたのです。あたしは、刑務所に服役するあいだ、《更生》と称されて自らの性欲を封じるために自慰を禁じられたことはもとより、そこで架せられたあたしの仕事は、毎日、重たい石の塊を背中の籠に背負い、刑務所の裏手にある崖の上まで運ぶことでございました。一年の最初の半年で担ぎ上げた石塊の山を次の半年間で、ふたたび崖の下に降ろす作業をあたしは二十年間ものあいだ繰り返しました。まるで神話の中で、神々が罪人に科した無益で希望のない刑罰のようなことをあたしはさせられたのでございます。そして仕事が終わると、風変わりな女看守(彼女は巨体を揺する大柄の年増女でございましたが)は、後ろ手に手錠を嵌めた全裸のあたしを尋問部屋の壁に掛けられた等身大の鏡の前に立たせたのでございます。あたしは鏡に映った自分の貧相な裸をいやでも見なければなりませんでした。そして、自分が変質的な性犯罪者であり、自分がどんなにいかがわしい男であるのかを告白し、罪を認め、まっとうな人間に更生されなければならないという鏡の抑圧は、まるで自分の裸体から性的な欲望のすべてを削ぎ落とそうとしているかのようでございました。それは性的苦痛を与える拷問と言えるもの以外のなにものでもなかったのでございます。事実、その更生はあたしから性欲を奪い、削ぎ落としたのでございますが、そのことによって逆に歪んだ欲望(今のわたくしはそう思ってはおりませんが)は迷妄を続けたのでございます。あたしは、刑務所を出所してからも性的な悪夢に苛まれる夜が続きました。夢の中で繰り返し与えられる意味のない労働、鏡に向かって行う自虐的な自己尋問、そして老女との性交の遠い記憶。やがてあたしは、自分が肉奥の髄から永遠に精液を搾り取られた抜け殻のような男になっていたことに気がつかされたのでございます。


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