Silent'Voice.-1
am.2:22
いつも決まってこの時間。
今日も電話が鳴り響く。
プルルルルル…ガチャ
「も…、もしもし…」
「なんで来てくれないの。なんで来てくれないの。なんで来てくれないの。なんで来てくれないの。なんでキテクレナイノ…。」
人間とは思えないドスの効いた低い声。
「きゃぁぁッッ!!!」
そのまま私は気を失った。
「は〜・・・。」
「どうしたのッ?月(ルナ)〜?」
私の名前は、哀澤月。あいざわ、という普通な苗字に、月と書いてルナと読む。声優をやっている。25歳。
「また電話がね・・鳴り止まないの。」
「タチの悪いストーカーね。可哀相に…。一週間前からだっけ?かかって来たの。」
「うん…確かそう。」
私の心配をしてくれているのが、新橋里緒。同じ声優仲間で、一番頼れる親友。映画の吹き替えが決まっていて人気爆走中。
「何か解決策は無いのかなぁ…。」
は〜っと溜め息まじりに里緒が言う。
「無いのかなぁ。」
思いつく事は全てやった。電話番号を変えてみたり、電源を切ってみたり、ずっと無視してみたり。
それでも電話はかかってきた。午前2時22分に。ましてや無視する案に至っては、8時間ぐらい鳴り響いていて、このままじゃ私は精神的に壊れると思い受話器を取ってしまった。
もともと私は心霊現象なんざ信じてはいない。だから今までなんとか耐えてきたが、さすがにそろそろヤバイ。嫌でも2時22分に目を覚ますようになってしまった。
「あ。」
ふと何かを思い出したかのように里緒が言う。
「何さ?」
「ルナってさぁ、私ん家泊まった事ないじゃん?だから泊まってみない?」
「おぉ!いい案だ!お願いしますッ。」
里緒の家に泊まれば…。電話はかかって来ないはず。電話番号違うし、住所も違う。もしかかって来たとしても、里緒が居るし怖くはない…と思う。
「じゃぁ、夕方あたりに家に来てね♪」
「ん〜。分かったぁ。」
「じゃ、私は帰って掃除するからさ、荷物まとめといて。」
「ん。じゃねぇ〜。」
私はそれとなく上機嫌だった。これで一週間続いた悪夢から一時だけだとしても、開放されるかもしれないんだ。
私はすぐさま自宅に戻り、身支度をした。いつも使っている化粧品。パジャマ、そして喉を保護するマスク。最後にお守りに念を込めて里緒の家に向かう。