Silent'Voice.-2
「おぉ〜。いらっしゃい。」
「お邪魔しますッ。」
里緒の家は意外と質素だった。無駄なものが一切無い。
「…綺麗な部屋ね。」
「何言ってんの!simple・is・bestよ。それにホコリ舞っちゃうと喉やられるしね〜。」
ほぉ。なるほど。と思いつつ、ベットに横たわる。昨日もろくに寝ていない。あの電話のせいで。
「あふ…。」
大きく手を伸ばし欠伸をする。開放感と眠たさで体が睡眠を要求している。
「まだ寝ちゃダメよ。料理作ったんだから!」
「くぅ…。」
眠さを我慢し、食卓へ向かう。
そこで一通り食べ終え、風呂に入り、やっと睡眠時間になった。
「や、やっと眠れるッ…。」
「私が隣で寝るからさ、怖くなったらいつでも起こしてね。」
優しい笑顔で里緒は言う。あぁ、里緒が友達でホントに良かった…と思いつつ、私はすぐ眠りに落ちた。
「ん、うぅ…。」
夏の暑さによる寝づらさと、あのクセで目を覚ます。ふと、時計に目をやる。
「am…2:21か…。」
あと一分。そして電話は鳴るのか、期待と不安混じりの気持ちで待つ。一分がとても長く感じた。
あと10秒。
あと5秒。
あと1秒。
プルルルルル!!
「ひあぁぁぁッッ!」
「ルナ?どうしたの?」
私の悲鳴で目を覚ました里緒が聞いてくる。
「で、電話…が…。」
「私、取ってみる。」
止めて、と言う前に里緒が受話器を取ってしまった。
「……。」
「り、里緒?」
「会社の人が映画の声優について話があるんだって。」
緊張が一気にほぐれ、体が安堵感に包まれる。同時に里緒から受話器を受け取る。
「はい!もしも…」
私の期待は簡単に崩れ去る。
「何で来てくれないの。何で来てくれないの。何で来てくれないの。何でキテクレナイノ!キテクレナイノォォォ!!!」
「ひっ…きゃぁぁぁぁ!!」
「え!?ルナ?ルナ!!」
「また…同じ、のが、電話からッ、ひっ、っくッ…」
「なんで…ルナ…安心して。大丈夫。大丈夫だから。」
その晩はずっと朝まで里緒の胸に顔を埋めていた。
「ルナ。あれはさすがにダメだよ。相談にしに行こう?このままじゃルナが壊れちゃうよ。」
「うん…っく…。」
心霊現象は全く相手にしなかった私でも、さすがにヤバかった。昨日のはもう、声じゃなかった。頭に直接、ダイレクトに伝わってきた。
「ホラ、もう泣かないで。私のおばあちゃんが霊能者だった気がするから、たぶん見てくれると思う。」
「あり、がとっ…。」
「困った時はお互い様よ。ただ、ことが深刻過ぎるよ。さ、もう朝だし、ご飯食べよう?そんなに泣いちゃあ、お腹も減るでしょう。」
「うん…。」
ふぁ〜。と欠伸をしながらキッチンに向かう里緒。頼もしくてしょうがない。
「私も・・」
手伝おうか?と言おうとした、その時。昨夜の出来事が脳内で蘇る。
「キテクレナイノ!!キテクレナイノォ!」
「ひっ…止めて!止めてぇぇ!!」