最初の悪夢-4
がばりと飛び起きた美里は、綺麗に整えられている制服と変わらない部屋にいまだゲームの中にいるのだと気付いた。そして昨夜──時計がないため正確な時間の経過はわからないが──の中出しに顔を青くした。
ふと思い至って「状態」と呟くと、ゲームの中で見た状態パネルが半透明で目の前に現れる。指で触れると、操作できるようだった。
──宮村美里 木野町高校二年生「状態:感度上昇U、妊娠初期、魅了X」
他は見たことがないが魅了だけはチュートリアルで見た覚えがある、と記憶を遡る。魅了は対異性での友好度、恋愛度の上昇率が上がる特殊スキルだ。最高レベルは五、最大まで上がっていることになる。
「妊娠って…」
ゲーム性を保つためか、このゲームでは妊娠はあっさり終わる。その上デフォルトで老化オフになっているため、子供を成長させると同い年の子供などという奇妙な事にもなる。
ベッドに倒れこむと、お腹が大きく鳴る。冷蔵庫を開き唯一入っていたおにぎりを食べたが、今後の食料はどうするか不安が生まれた。
「外、いかないとなぁ…」
幸いここはチュートリアルマップで、比較的狭くわかりやすかったため覚えている。近所のショップはコンビニの見た目をしていたからきっとコンビニと品揃えは同じだろうと歩き出した。
「いらっしゃいませ〜」
思った通り現実のコンビニと変わらないそこに安堵しながら、一週間分の食事を選ぶ。ゲーム内の物価は驚くほど安い。というのも、他にお金がかかる場所があるからである。
高い棚に狭いながら入り組んだ店内。うろうろと彷徨いながら商品を吟味していると、店員らしき男が後ろにぴたりとくっついてきた。昨日の事もあり一瞬ビクついた美里だが、敏感になっているだけだろうと棚へ意識を戻す。
「あ、ん!」
尻を力強く掴まれ、仰け反ってしまう。遠慮なくまさぐる手に声を抑えきれず、大きな声を上げてしまう。反対側の通路を通りかかった女性が訝しげにこちらを見てきたが、何事も無かったかのように商品を陳列している店員には不信感を抱かなかったようで、そのまま通り過ぎてしまう。
「っう、あ」
「大きい声出すんじゃねえぞ…」
後ろからぐ、と胸を掴まれた衝撃に思わず嬌声を上げると、そう囁かれる。口を手で押さえられながらコクコクと頷くとそのまま耳を音を立てて吸われてしまう。
「んんんっ、んんぅっ…うぅ…」
じゅる、じゅぱ、ぢゅぢゅ。
耳に直接響くいやらしい音に腰がびくびくと跳ねる。口を押さえているのとは反対側の手で胸を弄り回され、指先が丁度乳首に当たった瞬間電撃が走ったかのように頭が真っ白になる。
「んっ!」
しめたとばかりにブラの上から指の腹でクリクリと愛撫され、生理的な涙が滲む。
すると、突然身体を突き放した男が美里の向きを変え、棚に寄りかからせる。そのままセーラー服を上にたくし上げられ、ブラのホックを外されてしまう。はらりと落ちた紫のブラ──現実の美里はこんな派手なものは持っていない──には一瞥もくれず、露になった桃色の乳首へむしゃぶりつく。
「あっ! っん、ぅ、ん、」
周りに聞こえる、と焦って口を押さえた手がみるみる内に唾液塗れになる。鼻にかかったような喘ぎ声しか出せない美里は、周囲を見渡しながら責め苦に耐え続けた。
男の巧みな舌使いに身体を震わせる美里だが、昨夜の男のような快感は訪れなかった。それでも気持ちいいものは気持ちいいのだが、その事実によって昨日は何か仕掛けがあったのかもしれないと思い至る。
「〜〜〜っ!!」
が、その思考も摘まれた乳首に吹き飛んだ。コリコリと指先で転がされながら、時たま強く弾かれ、その直後に優しく撫でるようにまたコリコリと捏ねられる…。女の快感を理解している男の動きだった。
不意に男が動きを止め、いそいそと美里の服を正し始めた。ぼうとした頭で疑問符を浮かべると、男はポケットからクリームのようなものを取り出し、指先に塗りたくる。ちらりと服を上げた男は美里の乳首にそれをたっぷり塗りつけると、ブラを持ち去りバックヤードへ帰っていった。
「監視してるからな…買い物終わるまで帰るんじゃねえぞ」
去り際囁かれた言葉の意味を理解したくないと思考を止めながら、震える腕でカゴを持ち直した。