とある夕闇の生徒会室-1
ここはとある女子校の生徒会室。
ここでは日々生徒会の業務が行われ、生徒の話し声が絶えない。
そんな生徒会室も日が暮れると業務を終えて帰る人が多くなりすっかり人気が無くなるのだが…。
「流石にこの時間になると人も居ないわね…。」
夕闇が辺りを支配し始めているこの時間帯には、もう学校内にも生徒はあまり居ないだろう。
それに、そろそろ生徒用玄関の戸締まりも始める頃なのでわざわざ面倒な手続きをして教員用玄関から出ていく粋狂は居らず、面倒の前に帰る人がほとんどであった。
そんな私は面倒な事を好む変態ではなく、立派な『生徒会の仕事』の為にこんな時間に生徒会室の会長席に座っている。
私の視線の先には私と一緒に学校に残っている今期新しく入った新入生が一人これから何をするのか不安そうな表情で立っていた。
「会長…これからどんな業務をするんですか?」
私の雰囲気にいたたまれなくなったのか新入生が口を開く。
「美加さんがこれから円滑に業務を行えるようにする準備よ。」
そう言うと私は席から立って美加さんの前に立って手を取る。
手を取ろうとした瞬間に目を瞑り震えていた辺りこれから怒られるだろうと思っていたのだろうか…。
まあ、普段の私しか知らないなら仕方ないだろう…最近は怒ってばかりだったし。
手を取った私は生徒会室から繋がる隣の部屋に美加さんを連れていく。
普通の生徒会室は外から少しだけ覗くことが出来るのだが、隣の準備室のような部屋に来ればまず覗かれる心配は無い。
一方、連れていかれた新入生の方はと言うと、本当に何が何やら分からないと言った表情で私の顔色を伺っている。
「彼方は、時々私が遅くまで生徒会室に残っている事は知ってるかしら?」
私は美加さんに背を向けて問いかけた。
唯一この部屋で外に通じる窓を指でなぞりながら神経を耳に集中させる。
「はい…友人から噂だけは……」
「それはどんな噂?」
どうやら美加さんは私の想像以上にこの生徒会の事情に詳しいらしい。
「その…遅い時間に生徒会室の灯りがついている時は、生徒会役員同士の秘め事が行われている…と。」
…その噂は非常に的を得ていた。
ここのような女子校では噂話が常に絶えないがほとんどは噂止まりで、美加さんが言うような正確なのは珍しい。
尾びれや背びれが付いて本物になってしまったか、役員の誰かが流したのか…。
「そう…なら話が早いわ。」
そう言うと私は美加さんを抱き寄せて唇にキスをした。
キスをする時に抵抗せず目を瞑って待ち構えていた辺り、彼女にはその気が有るかもしれない。
「コミュニケーションをしましょう。」
口を離して微笑む。
「お互いの事を知る為に。」
そして私はもう一度キスをした。