新しい提案-5
「いいってば。チーちゃん。わたし、ホントに何も思ってないから。」
「いや、こういうことはきちんとけじめをつけなくちゃ。」
「そうよ、悠一。ちゃんと謝りなさい。」
「いや、その、あの、芽衣、ゴメン。オレ、その……。」
「悠一。ちゃんと頭を下げろ。こら、全くもう。」
「ねえ、メイちゃん。きちんとお詫びをさせて。二股なんて、男として最低だわ。
なんでも言ってちょうだい。」
「友和。芽衣がいいって言ってるんだから。」
「いや、そう言うわけにはいかない。相手がメイちゃんだからいいとか、
メイちゃんじゃないからいいとかじゃなくて、同じ男として、許せない。」
「わかったわ。じゃあ、わたしから悠一に、罰を与えさせて。」
「メイちゃんから罰?ああ、それがいいわ。
悠一が二度とこんな女性に対して酷いことをしなくなるように、
きちんと罰を与えてやって。」
「それですべてなかったことにするわ。チーちゃん、それでいい?友和さんも。」
「メイちゃんがそれでいいのなら。」
「ああ。メイちゃんに任せるよ。」
「悠一。そういうことよ。あなたもいい?」
「ああ。わかった。芽衣の言うとおりにするよ。」
「そう。じゃあ、まずは悠一。あなたとのセフレ関係は、解消よ。
もう二度と、あなたと会うことはないわ。二人きりでは。」
「ああ。当然だと思うよ。」
「それからもう一つ。」
「ああ。なんでも言ってくれ。」
「その、悠一の彼女、ここに連れてきて。
今すぐに、とは言わないわ。
次にわたしたちが会う時に。」
「でも、さっき、もう二度と会わないと……。」
「二人きりではね。」
「えっ?じゃあ……。」
「ちゃんと説得してから連れてくるのよ。いきなりの6Pじゃ驚くだろうから。」
「チーちゃん。友和さん。そういうことでいいかしら。」
「メイちゃん。ほんとに?そんな形で?」
「いや、悠一君は、そうしたかったのさ。なあ?」
「は、いえ、あの、はい。その通りです。」
「メイちゃん。知ってたの?」
「知ってたって言うか。わかるじゃない。
自分の好きな人に、別の好きな人ができたりすれば。
で、その相手がどんな人なのかも、大体わかるものよ。
悠一、正直だから、言葉の端々や表情で、全部わかっちゃうから。」
「じゃあ、悠一と、その彼女と、3人で会うことも考えていたってこと?」
「ううん。違うわ。」
「そりゃそうだろう。悠一君を取り合うようなことをわざわざ……。」
「そう。わたしもそう思った。
だから、何とかその彼女を連れてこれるようにしたいって考えていたのよ。
わたしの家に、ね。」
「うちに?」
雅樹が驚いた顔で芽衣を見た。
「ええ。雅樹と悠一を会わせるつもりだったわ。
悠一の彼女とわたし、そして悠一と雅樹。」
「なんだか、凄く複雑な対決になりそうだけど……。」
友和が控えめに言った後を受け、千遥も同調した。
「そうよ。お互いに嫉妬心の塊だもの。修羅場になるわ。」
「だから、盛り上がると思ったのよ。ね?雅樹も、そういう状況でっていうのは、
悪くないと思わない?」
「まったく。芽衣もいろいろと考えるねえ。
それもぼくたちの新しい出発の一つとしてかい?」
「あなたが連れてきた相手とばかりじゃ変化がないと思ったのよ。
あの頃、まさか悠一と雅樹が顔なじみとは思ってもみなかったし。
悠一の相手の女の子にも興味があったし。
いずれバレると言うか、バレそうなドキドキ感よりも、
もっと刺激的なことって考えたら、直接対決かなって思ったの。」
千遥と友和には、ようやく芽衣の計画が呑み込めた。
(悠一の彼女に芽衣が会う。自分のセフレを夫、雅樹に会わせる。
悠一に裏切られた彼女。芽衣に裏切られた夫、雅樹。
そして芽衣と悠一。この4人が一つ場所で顔を合せたら、確かに修羅場だ。
「でも、残念ながらこの計画はもう実現不可能ってことよね。」
「ああ。ボクと悠一君は顔見知りだったわけだし、そこは嫉妬の嵐とはならない。」
「でも、悠一の、その彼女って言うのは、まだ、わからないでしょ?」
「だから、今度、連れて来てって言ってるの。
悠一。そういうわけで、あなたの疑問、
この集まりへの参加資格についての答えは、こういうことよ。
あ、ちょっと待って。
わたしはそう思ってるけど、雅樹、チーちゃん、友和さん。
3人の考えを聞いてなかったわ。
わたし一人が勝手に決めちゃったら……。」
「いや、それでいいんじゃないか?」
「ああ。それぞれがパートナーを見つけたり新しいセフレを作った時、
相手が興味をもって、きちんとこの関係を理解したのなら。」
「ああ。来るものは拒まず、だ。」
「つまりそれって、美沙希の将来の彼氏や、恵介の将来の彼女も、
きちんと理解したうえでなら、参加資格があるっていうこと?」
「ああ。まさに家族ぐるみだね。」
「ねえ、それって、例えばわたしに新しいパートナーができたような場合も、
成立するってこと?」
「おいおい、チーちゃん。どさくさに紛れて凄いこと質問してるねえ。」
「あ、いえ、その、例えば、ってことよ、例えばってこと。」
「千遥。別にいいんじゃないか?
この集まりに加わっても、みんなとうまくやっていけそうな人物なら、
オレは構わないよ。かなり年下であってもね。」
「やだ、友和ったら。彼は違うわよ。そんな仲じゃないんだから。」
「チーちゃん。顔、真っ赤よ。」
「お袋。親父にバレてたみたいだぜ?」
「ちょっと、悠一。あなたまで何を言い出すのよ。違うって言ってるでしょ!」