新しい提案-4
千遥は友和のグラスを奪って、中身を一気に飲み干した。
「千遥も落ち着きなさい。よその家庭のことに何をそんなに苛立ってるんだい?」
「だって、こうして今日、5人で会ったのよ?
次は当然、家族ぐるみ、家族7人のお付き合いでしょ?
それなのにメイちゃんところは、まだ先に進めない状態だって言うのよ。
それも、兄妹の仲が悪くて、そんな状況にないっていうのなら仕方ないとは思うわ。
でも、そうじゃなくって、子ども同士がまだだから、親子の間もまだ、って。
ねえ。メイちゃん。そもそも、お宅のお兄ちゃんとお姉ちゃん、今、何歳なの?」
「えっ?お兄ちゃんの恵介が19歳。妹の美沙希が17歳よ。」
「ねえ、悠一。あなたがお母さんと寝たのはいつだった?」
「小さい頃は、よくお袋と一緒に……」
「ボケは要らないから!」
「確か、中学校に入ったころじゃないか?よく覚えていないけど。」
「ね?もちろん、その後、何日もしないうちに、わたしたちは3人で寝たわ。
順序なんていうこだわりは全くなかったのに。」
「ちょっと待って。千遥。」
「何よ、千遥なんて呼び方、久しぶりって言うか……。」
「ちょっと落ち着いて欲しいからよ。ねえ、千遥の家族の場合、
そもそも順序がないんじゃないの?」
「えっ?」
「千遥と友和と、悠一。ねえ、どんな順序が考えられる?」
「だって……わたしと友和が最初で……。」
「あ、ホントだ。わたしと友和は済んでいて、
次には、わたしと悠一が2番目で、3番目が3人、ってことだわ。」
「でしょ?でも、うちの場合は、いろんなパターンがあるのよ。」
「なるほど。芽衣が恵介君を誘惑するのが先でもいいし。」
「ボクが美沙希の処女をいただいてもよかったし。」
「兄妹が仲良くなった後に、両親に合流。」
「いや、いきなり、4人で、っていう方法もあるぞ。」
「なるほど。順序なんか無視しちゃうってことね。」
「ちょっと待てよ。だったら、いきなりここに参加させちゃう、っていうのも、
一つの手かもしれないぞ。」
「ちょっと待って。美沙希とお兄ちゃんの初体験がいきなり7Pってこと?」
「ああ。ちょっとばかり、究極な感じがするけどな。」
「ああ。でも、それもありってことか。」
5人とも口を閉じて考え込んでいる。
やがて芽衣が口を開いた。
「やっぱりここで話してること自体がおかしいのよ。
恵介の意志も、美沙希の思いも反映されない形でのセックスなんてありえないわ。」
「……。確かにそうだ。」
「うん。二人の気持ちが大事だな。」
「ね?だから千遥。焦らずに、メイちゃんと雅樹に任せておけばいいって。
いずれ機が熟すって。」
「……うん。そうかも、しれないわ。」
「でも、チーちゃんがそんな風に思っていてくれて、わたしはとっても嬉しいわ。」
「メイちゃん。」
「チーちゃん。わたしも、いつか必ず、
この場所に恵介と美沙希が加わるって信じてるし、とても楽しみにしているわ。
みんなにとって、一番いい方法で、というか、
一番いいタイミングで、それが実現できればって思ってるの。」
「ごめんね、メイちゃん。」
「ありがとね、チーちゃん。」
「まあ、しばらくはこの5人で楽しい時間を過ごしていけばいいじゃないか。」
「あのさぁ。ここに加わる人物っていうか、その、なんか条件って、あるの?」
「条件?悠一。どういうことだ?言ってみろ。」
「いや、だからさ。この関係って、これからどんな風に広がって行くのかなって。」
「だから、今言ってたじゃないか。
メイちゃんのところの恵介君と美沙希ちゃんが、やがて加わることになる。」
「うん。それはボクも楽しみだ。で、その他には?」
「その他?」
「うん。例えば、何年かしたら、ボクも含めて誰か結婚するだろ?
結婚しないまでも、恋人ができるだろ?
その時は、どうすればいいの?」
「どうすればって……。そりゃあ、例えば悠一に彼女ができて……。
その関係を大切にしたければ、この関りから抜ければいいし。
それはそれ、これはこれって、割り切れるなら、それもありだろうし。」
「いや、悠一君は、もう一つのパターンを考えているんじゃないのか?」
「もう一つのパターン?雅樹、なんのことだよ。」
「悠一君。ひょっとして、彼女、いるんだろ?」
「あ、いや、その、そういう、訳じゃ……。」
「悠一。わたしに遠慮しなくていいのよ。
わたしは単なるセフレ。あ、今は違うけどね。
かつてのセフレの前で気兼ねなんかしなくていいんだから。
あ、それとも、二股、かけてたでしょ?」
「いや、二股って言うわけじゃなくって……。
彼女も、メイちゃんとボクがそういう仲だってこと、知ってたし……。
ボクの家族がどんな家族かも話したことあるし……。」
「だから新メンバーに加えたいと思ってるんだけど、
悠一君の彼女にも、参加資格はあるかってことか?」
「おい、そうなのか?悠一。」
「いやだ、あなたったら、メイちゃんと二股かけてたなんて……。」
「チーちゃん。いいんだって。
もともと、わたしと悠一の関係は、お互いを縛り合うようなものじゃないんだから。
ねっ?悠一。そっか、ここに参加させたくなるような彼女ができたのね?
よかったじゃない。チーちゃん。友和さん。」
「チーちゃんがそう言ってくれると、ホッとすると言うか。ほんと、申し訳ない。
ほら、あなたも頭を下げなさい。」