決断-1
翌朝、普段より早い目覚めだった。
高橋から渡された50万の封筒を切り中身を確認した。
やはり高橋の感は当たっていた、律子は意を決したようにいつもより早く出勤していた。
大学の授業料をこの50万を足して銀行から振り込んだ。
「もしもし」
「はい橘プロの高橋です」
「あの・・・昨日の件お願いします」
「古野さんですね、お引き受けいただけるのですね」
「ハイ」
「それじゃあ、奥様のご都合を聞きたいと思いますし、今日お仕事が済んでから30分ぐらいお時間いただけますか」
「ハイ」
その日の夕方から打ち合わせを高橋の車中で始めた。
「この作品は100分で仕上げます、内容は大体お分かりだと思いますが、台本があります、家で読んでから監督と撮影の日程など打ち合わせします、後は撮影に入ります」
高橋は早口で説明すると台本を律子に手渡した。
「うちのプロダクションはまだ小さいので監督も男優として参加することもあります、この作品の中の舅役は三船監督が出ると思います、何かご質問はありますか」
「あの・・セックスシーンはどうすればいいのでしょう」
「もちろんモザイク入れますし安心ください、どの女優さんも一番演技で苦労されますが見る方も厳しいですから覚悟してください」
「やはり大勢の方が見られるんですね」
「そうありたいです、でも現実はわずかな男性が見るだけです、身内の方がご覧なる確率はほとんどありません」
律子は少し安心した様子だった。
「失礼ですがご主人様との夜は・・・」
「夫は体調崩していますのでありません」
「失礼なこと聞いて申し訳ない、いろんな事情でこの仕事なさる方がございますので」
買い物を済ませ帰宅すると7時ころになっていた。
「ごめんね遅くなって、急いで食事の用意するから」
「お母さん私も手伝うわ」
「お父さんどこ?」
「洗濯物をたたんでいたけど、今部屋じゃない」
誠也は寝室に横たわっていた。
その晩食事にも下に降りることもなくふさぎ込んでいる様子だった。
律子は食事の後片付けを済ませると台本を取り出して読んだ。
この台本では美奈子という未亡人、マタギであった舅や義弟との情事を演じるわけである。
浴室を舅に覗かれるシーン、通りかかった男に侵されるシーン、そして禁断の情事など相当プレッシャーがかかる内容であった。
数日後、高橋から電話があった。
日曜日、監督との打ち合わせで午後から時間を作る約束だった。
律子は午後街はずれのビジネスホテルに出向いた。
普段来たことのないホテルの二階の部屋が用意してあった。
「古野さん紹介します、監督の三船さんです」
ベレー帽を被った男が椅子から立ち上がって律子に手を差し伸べた。
「噂は聞いています、一緒に良いもの作りましょう、早速ですが台本の入浴シーンは田舎の古民家で撮影します、それから畑で通りすがりの男に犯されるシーンは野外で行います、一日で終えますので都合の良い日を申し出ください。」
「分かりました」
「それから撮影に慣れる為にもここで裸になって頂けますか」
(えっ、ここで・・・)
「ここで脱げないんでは仕事できませんよ」
三船は眼鏡の奥の目を光らせた。
律子はスーツの上着を脱いだ。
白いブラウス越しに豊かな乳房が伺える。
高橋は椅子から立ち上がると律子の背後に立った。
「古野さん、後は私が獲りますから」
(何をなさるの・・・)
ブラウスの最後のボタンを外ずすとブラの止めを外した。
するといきなり両手を胸に回して乳房を揉み上げた。
(何なの・・)
「撮影の予行演技ですよ、気持ち楽にして悶える様子見せなさい」
監督の三船は初めて口を開いた。
律子は戸惑いながらも喘ぎ声を出しながら顔を歪めた。
「高橋、スカートを獲れ、そしてベッドだ」
三船は指示を出すと持ち込んでいたカメラを向けた。
((*´Д`*)・・)
ベッドに倒さた律子は瞬く間にスカートを剥ぎ取られていた。
「奥さんこれから先は撮影現場でやります、予想はつくと思いますが下着はすべて獲られあなたの恥部は男優に委ねられます、覚悟はしておいてください、なかなか色っぽいボディーですよ余すところなく表現してください」
三船はそう言うと椅子に再び腰掛けた。
「お父さん、母さんは・・」
「知らない、夕方には帰ると言っていたよ」
無気力な返事が返ってきた。
「お父さん髭ぐらい剃ったらどう、それじゃあ余計病人に見えるよ」
「ほっといてくれ」
「でも母さんが可哀そうよ、仕事して疲れて帰ってもそんな顔してたんじゃあね」
幸は何げなく言ったが誠也には堪えていた。
「そうかもしれないな・・・俺は不要な人間かもな」
律子が帰ったのは7時を回っていた。
「ただいま」
「どこにいってたの」
幸はスーツ姿の律子を見て尋ねた。
「ううん、ちょっとね」
律子は二階の部屋に上がっていった。
「あなた大丈夫、食事まだなんでしょ」
「幸が作ってくれたよ、洗濯物はたたんでおいたよ」
誠也はベッドに横たわって言った。
「ねえ、最近まったくだけどその気ないの?」
「あれのことか」
「そうだけど、たまにはしてみない私だって溜まっているわ今夜する?」
律子はホテルで高橋に乳房を揉まれた時から肉体の疼きを感じ始めていたのだった。