Farewel l-1
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――――――男性が女性に対して惹かれ、欲望を募らせた時、
その瞳の奥には“欲望の焔”が灯る。
身分貴賤や年齢を問わず、
一見平静を見せ無関心を装っていても
心中に欲望を渦巻いているならば、
必ずといっていいほど“焔”を宿す。
フィガロ王国王妃のセリスは、その事実を身をもって体験してきた。
それはガストラ帝国のルーンナイトにして“女将軍”としての出発から世界崩壊までの激動を経て、
フィガロ国王エドガーの求婚を受け入れてから始まった様々な男達との“邂逅”の積み重ね。
自分の女性としての魅力を再確認するとともに、
夫や夫以外の男達が口にするセリスに対する称賛混じりの言動が拍車をかけたせいかもしれなかった。
いつしか“王妃”としての務めを果たしつつ、
甘美なる背徳の味をもたらす出逢いを無意識に待ち望むようになったセリス。
男は自分を求める。
その瞳の中に“欲望の焔”を宿して。
そこに例外はないのだとセリス自身は思っていた。
そう、そう思っていたのだが――――――――――――