Farewel l-4
(本当に分からないものね、人生なんて・・・・)
育ての親となるシド博士や恩人レオ将軍の顔が一瞬脳裏をよぎる。
今は亡き彼等もセリスの現在の姿をかつて想像することはできなかっただろう。
(・・・・・・・)
思わず口許に笑みを浮かべたことに内心慌てたセリスは改めて視界の先にいる人々の方に視線を合わせる。
耳に入ってくるエドガーの演説は当初より熱を帯び始めたようだ。
彼の演説もそろそろ終盤に入ろうとしていた。
ダンスホールにいる人々もエドガーが発する夫婦愛と結婚に至るまでの道程、
そしてフィガロ王国の将来についての熱い言葉にいつしかざわめくことも忘れてカクテルグラス片手に引き込まれるかのように聞き入っている。
そんな人々の目の輝きや表情を余所に、
セリスの脳裏では回想が続く。
―――――――これまでは彼女がガストラ将軍時代から世界崩壊までに関わってきた人々の顔が次々と浮かび上がってきたものだったが、ここからは王妃になってから関わりをもった人物の顔が浮かび上がってきた。
それは夫エドガーにも知られてはいけない関係性をもった人々の顔―――――
(・・・昔の私には考えられないことよね・・・まさかエドガー以外の男性と関係を持ってしまうなんて)
エドガーの学友にしてジドールの“富豪アウザー2世”。
先代フィガロ国王と同年代で、アウザーやエドガーとも付き合いの長い“ドマ国境に座する老領主”。
この2人だけでなく、
門外不出となった自らの肖像画を描いた“若い画家”や、
サウスフィガロの狼亭を経営する“若きコックのカール”、
そして共に世界を駆け巡ってきた戦友でもある大空のギャンブラー“セッツァー”が含まれる。
夫を持つ身でありながら、彼等と関係を持ってしまったセリスの所業はまさしく節操のない“娼婦”そのもの。
今セリスの中にはそうした自分の立場に悩み夫に対する罪悪感を覚える自分と、
男達に身体を開き愛技に溺れ、背徳の感情に身を委ねる自分もいる。
(ダメなことだとは、分かっているんだけれど・・・・・)
(でも・・・・・今“女らしさ”を感じられる時が、
エドガー以外の男に身を任せている時なんて・・・皮肉なことね)
£££££££££££££££££