Farewel l-33
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――――――――――それから数時間後、
―――――――ゴォォォォォ・・・・・・
―――――――ザバァァァ・・・ン
辺りには既に夜の帳が降り、空には無数の星がそれぞれの光を放っている。
巨大なエンジン音をたてながら、
客船の船体がゆっくりと船着き場から離れていく。
サウスフィガロの船着き場のあちこちに設置された照明が、セリスを含め見送りに来た人々があちこちに立っている様子を照らし出していた。もっとも照明が影になって遠目からお互いの顔を識別することは困難なのだが。
そんな彼等の視線の先には客船の甲板に立つ人々がいる。
思い思いに手を振ったり、必死になって声をあげたりと様々だ。
そんな人々からやや距離をとって立つ教授は手を振ることもなく無表情を変えぬまま、ただ静かに船着き場に立つセリスを見下ろしていた。
「・・・・・・・・」
『・・・・・・・・』
見送るセリスもただ黙って教授の姿を見上げている。
先程までの限られた時間の中で、
“別れ”を済ませているという認識を共有しているからだ。
それは互いの視線が交錯させるだけで、言葉を介さずに通じ合っている。
(・・・・・・・・)
次第に小さくなっていく船体と教授の姿から視線を外すことなく、
セリスの脳裏に教授に“餞別”を渡し終えた後のやり取りが鮮やかに甦ってくる。
波打つ教授の胸板に頬を寄せて余韻に浸っていたセリスの金髪をゆっくりと撫でながら、
教授は静かに語りかけセリスも応じた時のことを――――――――