Farewel l-23
そして教授の舌に翻弄されていたセリスに限界が訪れる。
「ん・・・んっ・・・ンンッッ!!」
下腹部から背中を伝ってくる快感が電流のようにセリスの背中を伝わり、
セリスは思わず唇を噛む。
次の瞬間には頭が真っ白になり、かろうじて身体を支えていた力が抜けていくように感じた。
(ああ・・・・・・)
岩の上でグラリと傾くセリスの上体はがっしりとした男の腕によって支えられる。
朦朧とする意識の中、セリスの右耳にピタリと寄せられた唇から教授の囁きがセリスの耳陀を擽った。
「・・・・・・セリス様・・・・」
そう囁いた後、教授の唇はゆっくりと離れていき、
男の両腕に支えられていたセリスの裸体がゆっくり浴室のタイルの上に横たえられていく。
(え・・・・・・?)
辺りに立ち込める白い湯気は色濃くなり、
気づけば目の前にいる筈の教授の姿は黒い影のようにセリスの眼前で変化していく。
全身にタイル独特の硬さを感じながら、セリスはうっすらと開けた視界の先で男の気配がゆっくりと離れていくのをただただ見送っていた――――――――――
*****************
――――――――どれだけの時間が過ぎたのか実感できないまま(実際は30分足らずの時間だったのだが)、
セリスはゆっくりとタイルの上から身を起こした。快感直後特有の気怠さが漸く覚めてきた頃だった。
「・・・・・・・・」
他に人の気配がない大浴場。
セリスは自分を置いていった形の教授が出ていった入口の引き戸を見つめていた。
ここに来た時から、
彼と一線を越えてしまうかもという予感はあった。
愚問とはいえ、このような場面をセリスは何度も経験しているし、
自分よりも一回り以上の年長者に身を委ねるのも抵抗はなかった。
実際にこうして遥かに年上の彼と唇を交わし、自身の“薔薇”に対する舌の愛撫まで受けたのだから。
そのまま教え子の妻との“背徳の時間”に身を委ね、“最後の一線”を越えてくるものと思っていたのだが。
(・・・・私が王妃だから?それとも・・・・やはりクリステール様が)
このような形の肩透かしを食らうことは、
セリスの“これまでの経験”の中で初めてのこと。
またセリスから見て、彼の瞳には――――彼女に愛撫を加えている間も、終始“欲望の焔”が灯っていないように見えた。
――――――――このまま彼の部屋に足を運ぶ気にもなれない。
一方でセリスの中で”嫉妬”のような“悔しさ”のような、
もやもやしたモノが沸き起こってきたこともまた事実だった。
(・・・・・・・・)