Farewel l-2
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――――その日、フィガロ城のダンスホールには王国内外から多数の来賓が詰めかけ、ひしめき合う彼等の熱気が城で1番広い空間に満ち満ちていた。
彼等は早いところは5日前から城に来訪している者もおり、
それだけでもこの日が重要な日であることを伺わせる。
そう、『この日』はフィガロ王国国王エドガーと王妃セリスの8年目の『結婚記念日』なのだ―――――――――――
――――ワァァァァァ・・・・・
――――パチパチパチパチ・・・・・
その記念すべき日の夕刻、
ダンスホールを埋め尽くす着飾った人々のどよめきと歓声、
そして拍手に迎えられたのは、
その日の主役である王妃セリスと国王エドガーの2人だった。
この日シャンデリラの煌めきの下、
用意された壇上に上がるセリスとエドガーの服装は、
王国を代表する夫婦の正装にふさわしいもので、共に白を基調したものであった。
セリスに至っては彼女特有のウェーブがかった金髪を後頭部で丁寧にまとめあげ、
無駄な肉のない肢体を包んだドレスの生地を白い絹タフタ・ブロケード、緑色の絹糸と金糸、シークインの刺繍、ピンタック、フライ・フリンジ、タッセル飾で飾り付けている。
装飾品は銀色のティアラやイヤリング、真珠の首飾りに限定し化粧も控えめに最小限なものとしたが、
セリスの意図はどうあれ彼女の気品や美を引き立たせるには十分すぎるくらいだった。
まさに一国を代表する王妃そのものだった―――――――――――