Farewel l-18
(でも・・・・・・)
それ以上に“夫の師”に対する背徳感よりも、
“1人の男性”として教授に惹かれつつあることをセリス自身が本能的に自覚していた。
それは今まで身近に接してきた夫以外の男性に感じたものに近い感情の波のうねり。
そこには父親ともいえるような年代や年齢差は何ら壁にはならない。
これは同様の経験のあるセリスが1番分かっていることだ。
(ここまで来たならば・・・今はただ成り行きのままにいくしかないわね・・・・・)
知らず知らず心の中で言い訳がましく自嘲しながら、いつしかセリスは曇りガラスの前までやってきていた。
―――――――カラカラカラカラ・・・・
静かに曇りガラスの引き戸を動かし中に滑り込む。
周囲は既に白い湯気に覆われ、
伝わってくる熱気により、セリスの白い肌は赤みを帯び汗がじんわりと滲み出していた。
視界の先には、風呂の中央に位置し、肩口まで湯船に身を沈めながら目を瞑る教授以外の人影はなかった。
―――――――ヒタ、ヒタ、ヒタ、ヒタ・・・・・
「・・・・・宜しいですか?」
裸足のままタイルを進んできたセリスの呼び掛けに対し、セリスと正対する形で湯船の中に身を沈め瞑想中だった教授の目がゆっくりと開く。
そこで声の主がセリスであること、
そして彼女が自らの正面に立っているという現実に動揺を隠しきれていないことがセリスにも見てとれた。
「セ、セリス様・・・・・」
「・・・・背中をお流しに参りました。・・・・宜しいですか?」
「あ、いや・・・・ま、まぁ」
先程までとはうってかわって何とか気持ちの乱れを沈めようと平静を装う教授に対し、セリスはどこか微笑ましさすら覚えてしまう。
そして湯船の縁にもうけられた一角で両膝をつき、教授に無言で頷いた。
それを見て教授も無言で頷き返し、
ゆっくりと身を起こし湯船から出てきた。
─────ザバァァァ・・・・・・