夫の目の前で 解放された欲望-1
「ねえ、あの子たち、何を考えてるのかしら。じっとこっちを見て……。」
「あら、本当。じゃれ合いは終わったのかしら。」
「休憩中?」
「まさか。あの年齢で、疲れるなんてこと、ないでしょ?」
「じゃあ、また何かトラブル?」
香澄と麗子の心配そうな表情を見て、征爾が口を挟んだ。
「いや、トラブルじゃないでしょう。こちらの様子を観察しているみたいですね。
トラブルが多いのは、むしろ大人の方かもしれませんよ。
とかく大人は様々なしがらみに囚われたり、
あれこれと余計なことまで考えてしまうものですからね。」
「確かに征爾さんの言うとおりだ。香澄。特にボクたちはその傾向があるからね。」
「いえいえ。わたくし共も同じようなものかと思いますわ。
燃え上がった感情や欲望も、一度冷めてしまうと、すぐには火はつかないわ。
若いころと違ってがむしゃらと言うか、遮二無二と言うか、
なかなか感情のままには行動できなくなるものですわ。」
「麗子らしくないね。君はもっと自由奔放に生きているのかと思った。
感情や欲望のままに、ね。」
麗子の言葉に対して、いつになく征爾が否定的な言葉を返した。
「あなたも、わたしの本当の姿を知らないのかもしれませんよ。」
麗子も感情を荒立てたのか、強い語気で応じた。
征爾と麗子の間に流れる空気に微妙な温度差が生じたのに気づいた雅和は、
その場を取り繕うように、笑顔を浮かべながら麗子に言った。
「それを人は、きっと分別とか理性とか言うのでしょうが、
正直、わたしの心の中にはそんなものにはとらわれずに、
猛進したくなる野生の心もある。」
「そうよね。それこそ感情のままに、欲望のままに、よね。」
香澄も雅和に同調し、麗子と征爾の気分を変えようとした。
「ええ。まあ、こうして自分たちの心理を分析してしまうこと自体が、
感情のままでも欲望のままでもない。
そんな我々を、子どもたちは危ぶみ、憐れんで見ているのかもしれません。」
征爾がいつになく自信なさげに言うと、雅和がおどけたように言った。
「じゃあ、今日はいっそのこと、童心…じゃないか。
若者に戻ったつもりで……してみませんか?欲望のままに。」
雅和の軽い口調に乗せられたのか、乗ったのか、征爾も笑顔になって答えた。
「そうですね。若者に負けず、欲望のままに。
自分の心に、素直になってみますか。恥も外聞も捨てて。」
4人はお互いの顔を見て、それぞれの気持ちの確認をした。
しかし、そうは言ったものの、さっき麗子が言ったように、
一度冷静に、理性的な話題を取り上げてしまった4人は、
いざ行動に移すきっかけがなかなか見つからなかった。
その固まった雰囲気を崩そうとしたのか、珍しく雅和が口火を切ろうと、
少し改まった表情で香澄に言った。
「香澄。君が目の前にいるからこそ、やりたいことがある。
君に隠れてこそこそするのではなく、君の目の前でね。」
香澄も当然、と言う顔をして答えた。
「いいんじゃない?思う通りにしてちょうだい。
わたしも、あなたが目の前にいる今だからこそ、やりたいことがあるわ。」
「真奈美もあそこにいて、こっちのことを気にしているこの場所でかい?」
雅和は真奈美のいるベッドの方へ視線を投げかけながら言った。
「あら、わたしは真奈美が見ていようといまいと、関係ないの。
そうね。心のどこかでは真奈美に見せつけたいと思っている部分もあるけれど。
とにかくもう吹っ切れたわ。本当に何の迷いもないもの。」
そう言って香澄は雅和から征爾へと視線を移した。
「香澄。その言葉が本当であるなら……。」
雅和の言葉を遮るように、香澄は征爾に向かって言った。
「征爾さん。わたし、そっちに行ってもいいかしら?
わたし、もうさっきから我慢が出来なくて。」
「もちろんです。いつでもいらしてください。」
そう言いながら差し出された征爾の腕に、香澄は巻き付くようにして身体を預けた。
「女のわたしから誘ったりしたら、はしたないかとも思ったの。
でも、はしたないことをしたい気分でもあるの。」
征爾は香澄を背後から抱きしめた。
「じゃあ、わたしが香澄さんのはしたない部分を全て引き出して差し上げましょう。」
「ええ。うんと乱れたい気分なの。何もかも忘れて、セックスに溺れたいのかも。」
征爾はそのまま背後から香澄の乳房を鷲掴みにするように激しく揉み始めた。
香澄は身体を征爾に預けながら、首だけ後ろを向き、征爾の唇を貪るように求めた。
互いの唾液がジュルジュルと音を立てながら、互いの口の中を行き来する。
香澄は後ろ手で征爾のペニスを掴み、自分の尻に当てながら扱き始めた。
香澄の尻がくねりながら征爾のペニスを刺激していく。
征爾は香澄の乳房から股間へと愛撫の場所を変えていく。
香澄の股間は太腿辺りまでがヌルヌルになるほどに濡れていた。
征爾は太腿の方から中心部へ向けて、ゆっくりと手を動かす。
そして肝心の部分をわざと通り越し、
下腹からへその周りへと愛撫の中心を移していった。
「ああ。意地悪。一番触って欲し場所を避けるなんて。」
香澄は征爾に意地悪されたお返しとばかり、
ペニスの先端の割れ目を広げるように、自分の尻に擦り付けた。
「ああ、香澄さん。そこ、そこ、いいね。頭の芯までしびれる感じだ。」
「ねえ、征爾さん。香澄って呼んで。」
「いいのかい?ご主人の前だよ?」
「あん。またそんなこと言って。主人の前だから、香澄って呼んで欲しいのよ。」
「本当は、奥さん、と呼ばれた方が感じるんじゃないのかい?」
「ああ、そう、それもいい。でも、今は香澄って呼んで。」
「香澄。可愛いよ。じゃあ、わたしのことも、征爾と呼び捨てて構いませんよ。」