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私の彼の青い傘
【大人 恋愛小説】

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二人で並ぶ銀の傘-4

『あなた彼氏でしょう?しばらくずっと一緒に居てあげてください。』
「分かりました。」
『小夜さんは625号室です。』


病室には、安らかに眠っている小夜が居た。肌は白くて、透き通って、掴めない感じがした。

俺は小夜の手を握り、話し掛けた。

「なぁ小夜。ゴメンな。彼氏の俺がさ、守ってあげられなくて。情けないよな。俺が泣いてしまった時も、慰めてくれてありがとう。小夜には感謝してもしつくせないよ。」

涙が手を伝って小夜の手が濡れる。

「俺って奴は…。ホント自分でも許せないよ。何にも小夜は得してないよね。俺だけ泣いちゃって…。俺は小夜無しでは生きられない。お前が必要だ。頼むから起きてくれ…。俺、お前をどんな事故からも守る。泣かない。だから…だから…。」

「……じょ…ぶ…よ。」
「今…喋った…?」
我が耳を疑った。起きないかもしれない。そう覚悟してたのに…。起きてくれた。
「大丈夫よ…。約束は…守るわ。」
「小夜…小夜ぉぉ!!」
「言ったそばから泣いてんじゃないわよ。私は離れないわよ…。」
「ありがとう…。」
「良いの。私は頼れない恭一が好き。すぐ泣く恭一が好き。しかも守ってくれたじゃない。」
「え…?」
「あなたがずっと手を繋いでなければ、私、死んでたかも知れない…。
意識が無くなっていく間、手の温かさだけがずっと感じてた。それがあったから私は大丈夫だった。よく考えて?一生一緒だよ?恭一を置いて逝く訳には行かない。」

「うぁ…ありがとう…。生きててくれて、ホントに。」
「お礼ほどではないわ…。私疲れた…。寝ていい?」
「おやすみ。よく寝なよ。」



それから一年。運命の6月25日。今日も雨が降っている。
小夜はと言うと、一週間前に退院した。後遺症で視界がちょっと狭いらしいが、本人いわく「これで困るほど私はヤワじゃない。」らしい。

今日も雨。傘をさしていつもの散歩道を歩く。右手と左手が繋がっている。互いの首には銀色の傘。俺の右手には青い傘。小夜の左手には黒い傘。

二人とも、幸せが離れないように手を固く握りしめる。絶対に。絶対に離れないように。

「「ずっと一緒だよ。」」


fin.


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