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私の彼の青い傘
【大人 恋愛小説】

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二人で並ぶ銀の傘-3

「ぷはッ…どうしたのよぉ?」
「なんかさ…いつの間にか居なくなっちゃいそうで…。」
「ふふッ。大丈夫よ。居なくならないから、いつまでも、何処でも。あなたと居るわ。」
「ッッ…。ありがとう。」

−−不覚だ。泣いてしまった。
「男でしょう?泣かないの!」
よしよし。と小夜が俺の頭を撫でる。出会った時と立場が真逆になっている。

「よし!泣かない。これからもよろしく。小夜。」
「ふふッ。こちらこそよろしくね。恭一。」
その後、再び熱いキスをした。

「じゃぁ、帰ろうか。」
雨足はさらに強くなってきた。体も冷えてきたし、風も強くなってきた。
「えぇ。そうしますか。」


家を目指し、傘をさして、手を繋ぎ歩く。俺の左手と小夜の右手が繋がる。
−−やはり小夜の手は冷たい。冷たい手を温めるように、俺の熱を手を使って小夜に送る。
「…暖かい。」
「よかった。」

家までもう少し。最後の交差点に差し掛かる。


キイィィィーッッ!!!
けたたましいブレーキ音とともに、小夜が視界から消えた。

「小夜!!小夜ッッ!」
必死で小夜を探す。−−見つけた!車から5メートル先に血まみれで横たわっていた。

「小夜!死ぬな!!今救急車呼ぶから!もしもし!?彼女が車に轢かれました!救急お願いします!」
「きょぉ…いちぃ…。」
「しゃべる…な…。」
涙で上手く喋れない。
「最期に…手…握ってよ…。」
「わかったからッッ…喋らないでくれ…頼む…。」
血で赤く染まった小夜の手を握る。白い肌に赤い血でなんとも痛々しい。
「あったかい…。ありがとう…。」
「いッ…いいから…だま…れ…。」

『どいて下さい!!早く!』
救急車が来た!!これで…小夜は助かるかも知れない!
「小夜!救急車来たぞ!助かるぞッ!生きろ!」
「……。」
「小夜?さよ…?」
「手…離さないでね…。」
「…わかった、絶対。絶対離さないから。」『救急車にお乗り下さい!早く!』

「なんかね…一生一緒に居るって言ったのにね…、約束守れなくてごめんね。」
「約束守れなくなるってなんだよ…。バカ言うなよぉ!まるで死ぬみたいなこと言うな…。」
「そうだよね…。生きるよ…。精一杯。」
「そうだよ!俺の最後のお願いだから!」
小夜はフッ、とにこやかに微笑んで唇を閉じた。
『意識不明!!昏睡状態です!』
『早く手術室へ!!』

「小夜…。約束守れよ。」

手術室へ運ばれて行く小夜を見て、俺はなぜか心底落ち着いていた。−小夜は、もしかしたら死ぬかもしれない。分かってる。だが、生きる確率もゼロじゃない。小夜は生きる。絶対に。そんな自信が心の隅にあった。



もう何時間経っただろうか。10時間か…それとも一日は経ったか…。

ウィィン…。
手術室のドアが開く。
「先生!小夜は!?生きてますか?」
『とりあえず一命は取り留めました。あとはこのまま、クライアントが起きるか。起きないか。です。』

起きなくても良い。ただ小夜が生きてくれるだけでよかった。


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