キミハ、ココマデ-1
人々が騒がしく行き交い、次々と国際便が飛び立つ、空港。
出発ゲート周辺には、次便に搭乗予定の客達がぞろぞろと並び始めている。
「じゃあ、行ってくるね。ヒロちゃん」
少女は、目の前に立つ少年を潤んだ瞳で見上げた。
「ああ、気をつけてな。志保」
少年は、自分を見つめる少女に精一杯の笑顔を返す。
「……」
「……」
無言のまま、視線を交わす二人。
『……』
どちらからともなく、キスをした。
ひゅー、と冷やかすような声と妙に通りのいい指笛が、フロアの数カ所から聞こえてくる。
だがそんなものは、両者にとって雑音ですらなかった。
「ん……」
「んん……」
周囲の音が一切届くことのない二人だけの世界で、少年と少女はいつまでもいつまでも愛を確かめ合った。