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キミハ、ココマデ
【寝とり/寝取られ 官能小説】

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キミハ、ココマデ-8

「っ……!」
 驚いたようにびくっと一つ肩を震わせてから、浩矢は恐る恐るモニターを覗き込む。
「志保」
 それは、待ちわびていたはずの名前だった。
 どうしようもなく大好きで、顔を見て、声を聞きたくてしょうがないはずの相手が、画面の向こうにはいるはずだった。
 ――なのに。
「……」
 浩矢の顔は、青ざめていた。
 今、自分がこの着信に応じたら、果たして何が起こるのか。
 答えなど、もう一つしか有り得なかった。
「ぐっ……」
 ぎり、と歯を食いしばる。
 出たくはない。
 聞きたくはない。
 その、はずだった。
 しかし浩矢の指は、まるで見えない力にでも吸い寄せられるように、手元のヘッドホンへと伸びてしまう。
 始まったのは、生中継。
「んあああああああっ!」
「!!」
 いきなり耳に飛び込んできたのは、ほとんど悲鳴のような志保の嬌声だった。
 その後ろからは、何やらごちゃごちゃとよく分からない言語が聞こえてくる。
 はっきりとは聞き取れなかったし、聞いたとしても具体的な意味はまるで理解できなかったことだろう。
 だが、今の浩矢に通訳は必要なかった。
 聞こえてきたのが男の声で、志保はそれに合わせて獣のようにひいひい喘いでいる。
 その事実だけで、浩矢には十分だった。
「い、いいの。マイケルの、いいのおおおおおっ!」
 後ろから抱きつかれ、容赦なく突き上げられる志保の白く透き通った肌は、モニター越しの粗い画面でもはっきり分かるほどに紅潮していた。
 気持ちも、そして身体も、かつてない昂ぶりに襲われているのは明らかだった。
「あ、ああ……」
 浩矢が未だ触れたことのない魅惑の塊が、ちぎれそうなほどにぶるぶる揺れている。
 綺麗なお椀型であるはずの乳房が、得体の知れない力でも加えられたように醜くぐにゃりと歪んでいた。
「あっ、んあっ、ひゃ、ひあああっ!」
 志保が、まるで精神のたがが外れたかのように狂乱じみたよがり声を繰り出す。
 それを煽るように、マイケルがまた何かを叫んだ。
 浩矢に、その意味は分からない。
 だが、おおよその察しはついた。
 ぎんぎんに怒張した一物を女の穴に突っ込み、激しく抽送している最中の男が叫ぶことなどほぼ万国共通と言っていいだろう。
「だ、出してぇ、マイケル! 思いっきり、中に、出してええぇっ!」
「!!」
 志保の言葉は、結果的に己の推測が正しかったことを浩矢に思い知らせた。
 ――そして、絶頂の瞬間。
「フウゥッ!」
「あ、あっ、あああああっ!」
 マイケルが筋肉を硬直させて射精すると同時に、志保もびくん、びくんと身体を震わせた。
 直後、静止した両者に、えもいわれぬ愉悦の色が浮かぶ。
「フゥ……」
「ふふ」
 視線を絡ませて微笑み合うマイケルと志保の間に、気だるい倦怠が流れた。
 それは、お互いに性的な満足を得たオスとメスだけに許される特別な空白。誰にも割り込むことのできない、幸せの時。
「知らない……」
 かやの外から自分の彼女が種付けされる一部始終を見つめていた浩矢が、ぽつりと呟く。
「こんな志保、俺は知らない……」
 もちろん、その声は志保に届くはずもなかった。
「フッ」
 志保に何やら声をかけて立ち上がると、マイケルは余力十分といった感じの軽快な足どりですたすたモニターに近づいてきた。
「なっ……!」
 同時に、浩矢の目がかっと大きく見開かれる。
「なんだ、これ……」
 目を引いたのは、巨大な肉の塊。
 黒々として猛々しい、オスのプライドを全て股間へと集約したような、マイケルの凄まじい一物だった。
「アー、アー、コニチワ、ヒロヤ」
 打ちのめされる浩矢の前に、マイケルの妙に白い掌がひらひらと、蝶のように舞う。
「シホ、トテモ、ステキ」
 野性的な顔をぬっとカメラに近づけながら、カタコトの日本語を続けた。
「オマ○コ、サイコー」
 親指を立てて浮かべたのは満面の、しかしあからさまに挑発的なニュアンスを含む、笑顔。
「っ……う……」
 浩矢はくしゃくしゃに顔面を歪めながら、ぼろぼろと涙をこぼした。止めることのできない嗚咽が、狭い部屋の中に響き渡る。
「フフ」
 マイケルはちらりと後ろを見やると、酷薄な笑みを浮かべながら半身になった。
 自然、背後に隠れていた志保の姿がカメラのフレームに映り込む。
「は、早くぅ……マイケル、早くうぅ……」
「!」
 浩矢の目に飛び込んできたのは、いやらしく発情したメスの、淫靡極まりないありさま。
「もっと欲しいのぉ……マイケルのおちんちん、もっと欲しいのぉ……」
 一糸まとわぬ姿で大股を開きながら男根をねだるその痴態に、可憐だった面影はもはや微塵ほども残されていない。
「し、志保……志保……」
 うわ言のように繰り返す浩矢の視界に、マイケルがまたすっと入り込んできた。
「コレカラ、モット、ファ○ク。イッパイ、イッパイ、ファ○ク」
 肝心な部分だけ、妙に発音がいい。
「ダケド……」
 汗がにじんでより野性味を増した端整な顔が、いたずらっぽくにやりと歪んだ。

「キミハ、ココマデ」

 白い蝶が優雅にふわりと舞って、
「あ……」
 カメラのスイッチが、切れる。
「あ、あ……」
 浩矢の前に広がったのは、米粒ほどの光もない、暗黒の世界。
「あ……あぁ……」
 世界が、ぼんやりと霞む。
「あ……あああああ……」
 無限に続いているかのように思える深い暗闇が、とめどない涙でにじんだ。


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