キミハ、ココマデ-6
「……」
浩矢がモニターの前でただ、青ざめている。
眼前にでかでかと開かれているのは、情熱的なキスを交わす男女の写真。
男女とはもちろん、志保とマイケルである。
「っ……」
浩矢は、言葉を発することができなかった。
合意の上ではないと言ってほしかった。せめて「冗談」という一言を聞きたかった。
しかし、いつもなら必ずついている志保からのコメントが、今日に限ってどこにもない。
言い訳などありはしないということだろうか。余計な言葉を連ねるよりも、この写真一枚の方がよほど事態を雄弁に物語るということなのだろうか。
「くそっ……!」
浩矢が動いた。さすがにこれはもう受け入れるだの男の度量だの、寝ぼけたことを言ってる場合ではない。
「出ろよ、出てくれよ……」
SNSでの通話だけでなく、直接電話をかけることも試みた。
「っ……」
だが、一向に志保とつながる気配はない。
「何なんだよ!」
浩矢は思わず声を荒らげた。
ツーショット写真を目にした時。
二人の距離が明らかに近づいていた時。
頭によぎった不安を打ち消すための労力を払わず強引に自分を納得させてしまったことを、浩矢は心の底から後悔した。
今さらどうにもならないと分かってはいても、それでも悔やんで悔やんで悔み倒した。
「志保……頼む……志保……」
ほとんど末期症状のような呻き声とともに、浩矢は電話をかけ続ける。
「くっ……」
だが、何度通話を試みても、とうとう浩矢が志保の声を聞くことはなかった。