出会い-5
とそのとき、部室のドアが開く。
入ってきたのは後輩の奈津美ちゃんだった。
『あっ。相馬先輩。小岩井先輩。お疲れ様です。』
奈津美は、あたしたちの後輩の一年生。
今日は、一年生部員の中で当番制になっている後片付けだったので彼女が一番遅く入って来たのだ。
それにしても、センパイが胸を揉まれながら騒いでいるのを見ても動じないのはさすが奈津美ちゃんといったところか。
『あっ。奈津美ちゃんいいところに。もう、聞いてよ、彩夏ったら、あたしのこと痴女呼ばわりするんだよ』
千鶴はカモ発見よろしく、奈津美ちゃんに助けを請う。
あたしも負けじと応戦をする。
『痴女です。着替えている人に胸をもんでくるのは痴女です。』
『なんですと。そもそも彩夏が朝部活に来ないからこんなことにならないんでしょうが』
『まっまあそうだけど。』
痛いとこを付かれあたしはちょっとうろたえた。
こうなったら、残る手段は一つしかない。
奈津美ちゃんに泣き付いちゃいましょう。
『うえーん。奈津美ちゃ―ん。千鶴がいじめるよお』
あたしに泣きつかれて罰が悪そうな顔をする奈津美ちゃん。
一年生という立場上どっちの立場にも立てないわけで。
って言うか、奈津美ちゃんにしてみればどうでもいいことだと思うしね。
『せっ、先輩たちって仲いいですねえ』
このまま続けるのも、奈津美ちゃんにとっても酷なので、あたしたちは一時休戦にした。
部室の中に残る、汗とほのかなスプレーの芳香のする中、あたしたちは着替えを終え、帰り支度を整える。
『これでよしっと』
『それじゃあ。先輩方失礼します。』
『うん。お疲れ様。奈津美ちゃんも元気でね』
『奈津美ちゃん。ばいばい』
見えなくなるまで手を振ってくれる、律儀に手を振る後輩と別れて程なく、千鶴とも別れる。