music☆lover-1
この二年間。
あたしは一生懸命あなた達のサポートをし続けてきました。
だけどとあるオーディションに受かった今、
あたしの存在の意味はなくなりそうです。
「リライトライト、デビューおめでとー!!」
リライトライト。
あたしの彼氏、佑介を含む三人で結成されたロックバンド。
で、あたしはマネージャーというか。
「何、今日ゆっきのおごりじゃなかったの?」
「え、まじで?違うの?」
そりゃあ。
デビューが出来るって知らせ聞いた時は飛び上がって喜んで、思わずあたしがおごっちゃるなんて言ってしまったけど。
実は持ち金は千円。
「だからあたしの家にいるんでしょう」
あんたらの色んな費で吹っ飛んでったのです。
「だって、千円で何が食べられますか?」
「コ…ンビニ弁当…?」
「それも四人分は買えないでしょう」
結局、蒸し暑い夏の最中、五畳半のあたしの部屋で鍋パーティ。
と、あたしが勝手に決めた。
リョウジが揚げ足を取る。
「おごってくれるって言ったのに…」
「だからあれは!取り消して!!」
文句ばっか言いやがって。
ぐるりと三人を睨み回してやると、脱色で色の薄くなった髪をいじっている佑介と目が合った。
何か言おうと口を開く。
そうか。お前も文句を言う気だな。おごれ、と。
「…まあいーんじゃねぇの?優姫だってイロイロ頑張ってんだし」
「ゆ…っ」
佑介様ー!!
「佑介だけだよーそんな事言ってくれんの!」
「いや、俺達が自分のモノは自分で買えば良いだけの話なんだけどな」
「分かってはいるんだな」
彼はまぁな、と一言言うと箸を持ち、具材を鍋の中に流し入れた。
取り敢えず、いいか。
「あのさ」
それから三時間。
散々騒いだ末、リュウジとナオキは片付けもしないで帰ってしまった。
佑介はあたしに話があるから、と残って手伝ってくれている。
「何?」
「昨日偉い人と話したんだけど」
あたしは台所で洗った食器を拭きながら聞いていた。
「別れよう」
それは嵐のように突然やってきて。
ってそういう事ではなくて。
「…なんでそうなるの?」
時間が止まった気がした。
気がしただけで、実際部屋の中には時計の秒針の音だけがしっかりと響いていた。
手に皿を持っている事すら忘れそうになる。
佑介はあたしから目をそらすだけで、何も言わない。
「…ねぇ」
「言われたんだよ、問題になるのが面倒だから、彼女がいるなら別れろって。俺だって抵抗したかったよ、だけど…」
やっぱり逆らえないから、と彼はぼやく。
「やだよ…」
あたし達の関係は、こんなにも簡単に崩れてしまった。