朔太郎とサクミ-7
「いや、あの、つまり、オレの友達って言うか、
仲間って言うか、変なやつばっかりなんだけど、
みんな揃って不思議な体験を高校時代にしてるんだ。」
「朔太郎様のお友達?」
「うん。まあ、友達、だね。」
「不思議な体験、と申しますと?」
「いや、みんな、高校時代にいい思い、して……。あ、いや、いい思いで卒業……。
いや、いい思い出をつくって卒業してるんだよな。」
「そのいい思い出、と言うのが不思議なのですか?」
「うん。幸太郎先輩は野球で勝ち抜くたびに抱かせてくれる女の子に恵まれて。」
「勝ち抜くたびに……。」
「うん。結局、準決勝で負けちゃったんだけど、その原因が先輩の不振でさ。
前の晩、その女子高生と3発やったとか言うんだよ。
で、腰を痛めて、散々な結果になっちゃって。
でも、高校生活を飾るにふさわしい体験だと思わない?」
「た、確かに、そうで、ございます、ね。」
「翔琉の奴は、は柔道部でさ。団体戦で優勝したら御褒美にって、
チーム5人が一人の女の子に個人戦と乱交戦までしてもらったって。」
「個人戦と、乱交戦。」
「そう。夕方から始まって、夜中も寝ずに翌朝まで。
彼女、一人で5人の猛者を相手に、最後まで勝ち抜いたらしいぜ。」
「え、ええ。でも養護教諭にあとでバレて……あ、いや、こちらの話でございます。
確かに、皆様、素晴らしい逸物をお持ちの……
あ、いや、素晴らしい思い出をお持ちになられて卒業されたわけでございますね。」
「電車の中で露出女子高生に会った、っていうやつもいるんだけどね。」
「電車の中での露出、でございますか。」
「でも、サクミちゃん、この前、言ってたよね。
今どきの女子高生、電車の中での露出なんか珍しくないって。」
「は?わたくし、そのようなことを申し上げた記憶はございませんが……?」
「えっ?ほら、あの日。駅で会った日の帰り。
サクミさん、電車の中で露出しちゃったって言ってたじゃん。」
「あの日?あの日の帰りでございますか?
確か、あの日の帰りの電車の中では……、
わたくし、スマフォを用いて、必死に検索しておりました。
朔太郎様の手掛かりを求めて……。」
「あれ?じゃあ、露出の話は何だったんだろう。」
「さあ。わたくしにはわかりかねますし、
あの日に限っては、誓って電車内での露出は致しておりませぬ。」
「そっか。いや、それなら別にいいんだ。
章人の体験はみんなのと比べたら大したことないし。
高校、卒業しちゃったけど、
サクミちゃんとこうして出会えて、これからいい思い出が作れそうだし。」
「もしかして、みなさん、あの日、教室にいらっしゃったのではありませぬか?」
「あ、そうです、そうです。あいつらです。」
「では、その方々もわたくしのことをご存じと言うことですね?」
「い、いや、男子校の方からは、あの時間帯、逆光でさ。
シルエットしか見えないし、それに、オレ、あの日に限って超望遠……、
あ、いや、その、とても誰だか、顔が確認できるような距離でもないし。」
「では、どこの誰かはわからないが、男子校の学生たちに向けて、
窓際に張り付くようにしてやっておりました、
ストリップ&オナニーの露出ショーは、ご堪能いただけたのでございますね?」
「あ、いや、その、ご堪能っていうか、まあ、そ、それなりに。」
「一つお聞きしたいのですが?」
「あ、はい。な、なんなりと。」
「あの時間帯、そしてあの距離、そして逆光という条件の下、
わたくしの姿や動きはどの程度確認できたのございましょうか。」
「あ、まあ、肉眼だと、ああ、誰かいるみたいだなあ、あれ?何かしているぞ。
おい、あのポチッとしたのってひょっとしたら乳首じゃないのか?
って言う程度でしか確認はできなくって。」
「そ、それでは、ほとんど何も見えていないのと同じではございませんか。」
「あ、で、でも、オレ、いっつも、カメラと望遠レンズ、持ち歩いているので……。」
「望遠レンズ?では、それを使って覗かれたのでございますね?」
「あ、はい。使って覗かれました……。ごめんなさい。」
「で、望遠レンズを使うと、どの程度、確認できたのでございますか?」
「あ、あの、つまり、首にリボンをつけただけで、後は全裸だとか……。」
「それから?」
「こ、こ、股間でくねくねうねっているものを……出し入れしてる、とか……。」
「それから?」
「ストリップダンサーのように、座ったまま、細く長い足を上下させながら、
胸をゆっくりと揉んでいる姿とか……。」
「それから?」
「身体を後ろに反らしていく時に、長い髪が背中側に流れるところとか……。」
「それから?」
「それから?いや、こっちもいろいろともめごとがあったりしたから・・・」
「もめごと?もめごととは?」
「あ、いや、だから、誰がのぞくんだとか、順番とか、オレによこせとか。」
「順番?ああ、カメラの望遠レンズを覗く順番ですね。」
「あ、はい。」
「顔は確認できたのですか?」
「あ、いや、残念ながら。何しろ逆光のシルエットだし、あの距離だし。」
「では、わたくしが露出していたのかどうなのか、
証明するすべはないということになりまするのでしょうか。」
「いや。それほど詳しく知っているのなら、
あれはサクミさんに間違いないんだろうな、って思うけれど。」
「で?」
「で?とは?」
「いい写真が撮れましたか?」