朔太郎とサクミ-5
「はい。2年前の夏の夜。ここからさほど遠くはない、街を見下ろす公園。」
「2年前の夏の夜?ここからさほど遠くはない、街を見下ろす公園?」
「はい。その公園の端にある砂場を越えたところ、
少し崖になったところにしゃがみ込んでいるわたくしの頭の上の方で……。」
(ま、ま、まさか……。)
朔太郎はサクミの言葉の後を受け、恐る恐る話し出した。
「オナニーをして、街めがけて射精した後……。」
ちょっと間が開いた後、サクミが続けた。
「気持ちよさそうに、放尿までなさって……。」
「最高だ〜。全裸での散歩。公園でのオナニー、そして立ちション。
犬の散歩をしながら何日も調べた甲斐があったぞ。
そう言えば今夜はあのいつもの女には会わなかったなあ、
と叫んだのがオレ……。」
「はい。砂まみれになった全裸の身体に、
朔太郎様のザーメンとおしっこをかけられた女が、
このわたくしでございます。」
「じゃあ、あの時の露出少女は……。」
「石原サクミ。わたくしでございます。」
「ご、ご、ごめんなさい。
まさか、あそこにしゃがんでたなんて……。
ああ、なんて酷いこと、しちゃったんだろう。」
「いいえ。朔太郎様は、酷いことをしたのではございません。
オナニーとおしっこをしたのでございます。あ、ついでに、露出も。」
「えっ?じゃあ、オレが犬の散歩がてら、ルートを調べてた時にすれ違った……。」
「はい。わたくしに間違いございません。
わたくしも、ルートを調査している時、
いつもイヤフォンで音楽を聴いていて、
犬に引かれていくように歩いている朔太郎様と何度もすれ違ったのでございます。」
「そ、そこまで、そこまでつながったんなら、そんなに縁があるんだったら、
もうラバーズディスタンスでいいじゃない?」
「いえ。まだ、わたくしには朔太郎様に知って頂かねばならない、
いくつかの、本当の姿がございますので。
では、わたくしは再びお父様の書斎の方へ戻らせていただきまする。
あ、一度、通話は切らせていただきまする。」
サクミ恐るべし
「お待たせいたしました。」
「お待ちしておりました。あのさ。サクミちゃん。」
「はい。何でございますか?」
「あのさ、なんで言葉遣いまで戻っちゃったわけ?」
「ああ、やはり、最初のイメージを大切にした方がよいのではないか、
と思ったのでございます。」
「そっか。でも、二人っきりの時は、さっきまでみたいに、
じゃん、とか、だよ、とかの方がいいんだけどなあ。」
「これも慣れでございます。わたくしはどちらでも使い分けができますれば、
すべてを話し終えた時に、再び考えさせていただきたく思うわけでございます。」
「あ、で、その、まだ話さなきゃいけない、いくつかの本当の姿って、
いつ教えてくれるの?」
「わたくしがお教えするというよりも……。
朔太郎様なりに、何かあるのではないでしょうか?」
「オレなりに?」
「はい。わたくしについて、
いくつか不思議に思ってらっしゃることがおありのように見受けられますし、
反対に、何か隠してらっしゃることもおありのようにお見受けいたしますが。」
「オレなりに……。」
「はい。ですから、ここからは朔太郎様が不思議に思ってらっしゃることを、
このわたくしに直接ぶつけていくというような方法で、
わたくしの本当の姿を知って頂くというのも一つの方法かと。」
「オレが……聞きたいことを、ストレートに聞いちゃってもいいってこと?」
「はい。何のお気遣いもいりませぬ。
こんなことを聞いたら失礼かな、とか、傷つくかな、などと言う、
遠慮も配慮も、遠慮なしで、と言うことでございます。」
「なるほど、ね。」
「そもそも、先日、駅でお会いした時のことから、
不思議に思ってらっしゃることがおありではございませぬか?」
「…………………………。
サクミちゃん。あの日、なに、してたの?
オレと会う前。つまり、夕方。」
「あ、やはり。階段で露出をしていたこと、をお聞きですか?それとも……。」
「あ、は、はあ、やっぱり、露出、してたんだ……。」
「はい。階段の下から登ってくる朔太郎様に思いっきり見せつけるため、
でございます。
あ、ただ、あの時はまだ、
わたくしを付け回している男子が朔太郎様と分かっていたわけではございません。
朔太郎様が転ばれて、膝を見るために、ズボンを下ろした時に、
タグに書かれた名前を見て、初めて、もしかしたら、と思ったのでございます。」
「でも、やっぱり、あの時…。
オレの見間違えじゃなければ、ノー、その、つまり…。」
「ノーパンでございました。
というか、わたくし、基本、普段からノーパンと思っていただいて結構です。
あ、いわゆる見せパン、見せるためのパンティーをわざわざ履くことも、
露出の効果を考えて、時にはございますが、基本、普段はノーパンでございます。」
「あ、そ、そうなんだ。つまりは珍しいことじゃなかったってこと、だね。」
(じゃあ、さっきのも、別に普通だって言うことなんだ。そっか。そうなんだ。)
「はい。あの時、そのような準備をする時間もございませんでしたし。」
「あ、そうだよね。見かけてからずっと、見てたもの。
例えばパンティーは履いてたら、脱ぐ暇なんてなかったものね。」
「はい。パンティーは、あくまでも、
あ、おそらくはわたくしに限ったことではございますが、
露出する際の、視覚的な効果を高めるためのアイテムと考えております。」