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天神様は恋も占う?
【青春 恋愛小説】

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清爽なキッス-6

先程小林監督が菊水館の監督に尋ねに行ったところ、“クオン”は間違いなく1年生であることが確認された。とはいえ。
「球は1年生のモノじゃないな、あれは」
「どんな感じだったんですか?」
消極的な隼斗も話にのってきた。
「ああ……、なんていうかな、ストレートが浮き上がって見えるんだよ」
「浮き上がって、ですか?」
「多分他の奴よりノビがあるんだよ。あんな球は今まで見たこと無いな」
球をしっかりと当てる事に関しては、月雁高校の中でも随一の有河がこう言うのだから間違いの無いことなのだろう。
「それにしても有河先輩、よくそんなのを当てましたね」
「いやあ、偶然じゃねぇのか? ハハハ!」
声も高らかに笑い出す有河。そんな折、隼斗が何かに気づいた。
「あれ? ピッチャー変わったみたいですよ」
声に釣られてマウンドを見てみると、先程の“クオン”ではないサウスポーの選手が上がっていた。おおよそ、練習試合だから投げさせてみた、というところだったのだろう。今度のピッチャーは遠目から見ても“クオン”よりガッチリとした体型である。
 ウォーミングアップの様子を見てみると、“クオン”の球より球威も無さそうであるし、何故か威圧感のような物も感じられなかった。
「おーい、中野! 小松島!」
 2人が呼ばれた方向を振り返ると、監督が満面の笑みでこちらに向かって手招きしていた。
「なんでしょうか?」
 隼斗が尋ねると、監督は先程の笑顔そのままで、
「お前ら、次の回から守備交代な」
「ふぇ?」
 突然の指名に間抜けな声を上げてしまった。
「はは、中野、気を抜いたらダメだぞ。お前はショートだからな」
「あ、はい」
「小松島」
「はい」
「お前は……、そうだな、ライトで行け」
「わかりました」
「よし、今のうちに少しアップしておけ。そろそろチェンジになりそうだからな」
 見ると、ちょうど月雁の選手がタイミング良く空振りしたところだった。
「監督、今何回ですか?」
「ええと……、7回だな、1アウトで」
「わかりました、隼斗、キャッチボールでもしとこうぜ」
「ん、オッケー」

 颯爽とベンチを後にした2人。その背中を莞爾として見守る有河だった。
「……打てないね」
「……そうだね」
 ボソボソと呟き、2人同時に溜め息をついてしまった。
「強いって聞いてたけど、まさかこんなに強いなんてねぇ……」
 真奈が本音を漏らした。私も切にそう思う。
「私も。此処まで差があるとは思わなかったな」
 始まって5分くらい経ってから球場の観客席に入ったが、そのときには既に1点を先制されていた。その後も月雁の得点板はゼロ行進。菊水館の方は様々な数字が書き込まれていく。そしてそれを見ながら真奈とともに溜め息をつくのだった。本当は声とか出して応援したほうがいいのだろうけど、こんなにも歴然とした差がついてしまうと声が出しにくくなってしまった。
 ちなみに、只今6回裏、菊水館の攻撃が終わって11対0。
「はあ……」
 勝つのは到底無理そうだ。


 試合は7回の月雁高校の攻撃になった。相手は3人目のピッチャーを投入してきた。尤も誰が出てきたところで、試合のペースが月雁に傾いてきたり、点数が入ったりするわけではないのだろうけど。
「もう7回かぁ」
 横で真奈がしみじみとした口調で言う。横顔を覗くと、やはり寂寞の色に染まっていた。
「うん……」
 私ももう少し粘ってくれるかと思っていたのだけれど。


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