一日ピエロ-1
『ねぇ、花火しない?』
毎日のうだるような暑さに参っていた。
電気を消して、ベッドに体を投げ出して目を閉じる……そんな時だった。彼女からの電話が来たのは。
《昔みたいにさ、ね?やろうよ!》
なぜこんな暑い夜にやらなくちゃならんのか。だが、結局は俺が折れる形になるんだ。
電話を切って俺は部屋を出た。
彼女は場所を教えてくれなかった。探してみろということだろう。
だけど、別に場所なんか聞かなくても分かる。彼女は何かあるとき大概あそこにいるから。
途中、自販機で飲み物を買う。あとで絶対文句を言うのが目に見えていたからだ。
ジュースを二本買って、俺は彼女がいるであろう場所へと足を向けた。
俺が向かった先は、昔通っていた中学校の校庭だった。
野球部のベンチに人影を見付ける。俺は人影に歩を進め、眼前にさっき買った飲み物を差し出した。
『よく分かったね!場所教えてないのに』
そんなこと、言わなくてもわかるよ。
それに、お前がこういうのをするときは決まって何かがある時なんだ。
二人でしばらく無言で飲み物を飲んだ。何も言ってこないのは、俺が選んだ飲み物に満足している証拠だ。
前にこういうのがあった時、俺が選んだジュースが気にいらなかったらしく、説教を喰らったことがあった。どうやら今回の選択は及第点らしい。
彼女は俺より早く飲み終わり、俺に早く飲み干せと目で訴えかけてくる。
俺は、あえて急がずに飲み物を飲み干した。
『ねぇ、みんなも呼ぼっか!?』
打ち上げ花火を選びながら彼女は俺に問う。
俺は何も言わずに彼女の選ぶ中から一つの打ち上げ花火を指差した。
『……たまには二人でもいっか』
ただ遊ぶだけなら何人でも仲間を呼ぶよ。
だけど、お前になにかあったのを俺は感じていたし、なによりも二人でいたかった。