一日ピエロ-2
他の奴等にお前の話を聞かせたくないんだ
二人だけで共有したいんだ
お前を離したくないんだ
お前と一緒にいたいんだ
考え終わって自分の醜い独占欲に苦笑する。
どうやら彼女はもう花火に火をつけていたらしい。
爆音とともに火球が空へと向かっていく。
俺は、地面に置かれた花火たちに火をつけまくった。
様々な花火を見て興奮している彼女の瞳にいつもの輝きが戻る。
よかった。楽しんでくれてるみたいだ。
俺も段々と楽しくなり、二人だけの花火大会を楽しんだ。
線香花火だけは残しておいた。
花火の残骸を片付けて、線香花火に火をともす。
鮮やかだけどどこか儚い火花は、何色もの光で彼女の顔を照らす。
俺は隣で、彼女を抱き締めたい衝動を必死に抑えていた。
『ねえ……話、聞いてくれる?』
彼女からの一言ではたと我に帰る、そして俺は頷いた。
話すのは彼女、俺は聞くだけ。けどそれでいいんだ。
いつも話し終えたあとのお前は、晴れやかな顔をする。
俺が時々相槌をうってお前を笑わせる。
彼女に必要な心の支えは、いつも一緒にいる様なものではなく、時々会って良いことも悪いことも隠さずに話せる、そんな存在が欲しいんだ。
まるでピエロみたいだな。だけど、俺はそれで構わない。
話を聞いて頷いて、たまにお前を笑わせる。
今日は一日ピエロになってやるよ。存分に楽しみな。
『あのね……』
花火の煙と馬鹿みたいな暑さにむせかえりそうな中、俺の一日ピエロは始まった。