再会 あなたのことが知りたい-7
『あの。朔太郎様は、今、何をしてらっしゃるんですか?』
「あ、いや、まだ、触ったりはしてないです。かなり硬くはなってますが……。」
『かなり硬く?ああ、進路について心に硬く決めたものがおありなのですね。』
「チンコ?いや、チンコだなんて。その、いや、直接過ぎますよ。」
『でも、進路についてはご自分で直接決めませぬと。
人に流されては一生後悔いたしますゆえ。』
「あ、進路?進路ね。あ、はいはい。進むべき道、ですね。」
『高校を卒業されてから、何をなさっているのか、伺っていなかったもので。』
「あ、そっち、あ、ああ、はい。えっと、今、何をしてるかって言うならば、
何もしていないっていうか。
大学は落ちちゃったんで、予備校に行こうか専門学校に行こうか迷ってるうちに、
コロコロに巻き込まれちゃって、何もしていない状態です。」
『あら。わたくしも、実は入試は大失敗。
親からも、早く進路を決めろと言われてはいるんですが、
朔太郎様のように心がなかなか硬くならず、決めていない状況です。』
「じゃあ、今はずっと家ですか?」
『いえ。時々、趣味のために出かけます。』
「趣味?サクミさんの趣味って、なんだろう。」
『なんだとお思いになります?知ったら驚かれますわ。』
「驚くようなこと、なんですね?」
『ええ。わたくしの周りには、同じようなことをなさる方はあまりいませんから。」
(えっ?さっき、友達もよくやってるって言ってたじゃん。
えっ?じゃあ、露出は趣味じゃないってこと?
えっ?じゃあ、何が趣味なんだ?
露出じゃなくって、周りには同じようなことをやってる人がいなくって、
聞いたら驚くようなこと?)
朔太郎の妄想が膨らむのとは関係なく、サクミはさりげなく話題を変えた。
『そうそう。先程も少しだけお話いたしましたが、
わたくし、朔太郎様に撮って頂いた写真のお礼が言いたくて、
朔太郎様を中3の時からずっと探していたのでございます。』
「いや、お礼だなんて、たまたま偶然です。」
『いえ。その偶然がわたくしの人生を大きく変えてくれたのですから、
朔太郎様はわたくしにとって神様のような存在なのでございます。』
「ボ、ボクが神様ですか?いや〜、参ったなあ。」
「朔太郎様。本当にありがとうございました。
実はわたくし、あの写真を撮って頂くまでは、
引っ込み思案の、ただただおとなしい女の子だったのでございます。
でも、あの写真で、わたくしの中に隠れていた、
まあ、つまりその、なんと申しましょうか、
美し……。
いや、自分で言うのも何でございますが、
その、つまり、可愛さ……。
まあ、人それぞれにある長所と申しましょうか、いいところと申しましょうか、
それに気づくことができたのでございます。
自分に自信を持つことができたのでございます。』
「あ、はあ。」
『あの写真が写真館に飾られたことで、
わたくしは学校中の男の方々から注目を浴びました。
何人もの男の方々がわたくしに告白してくださるようになり、
わたくし自身も、自分の持っている、
今まで隠されていた美しさや可愛らしさを自覚することができたのでございます。』
「あ、そ、そうなんで、すか。」
『はい。そして、わたくしもどなたかの自信を引き出すための、
お役に立てるのではないか。そう思うようになったのでございます。』
「は、あ。」
『それからというもの、わたくしがお力になれそうな男の方を見つけては、
お声をかけさせていただき、
その方のお力になるため、わたくしの全てを投げ出して参ったのでございます。』
「あ、あの。すべてを投げ出しって?お金、ですか?」
『いえ。とんでもございません。お金など貰ったことなど一度もございません。
もしもそこにお金などが介在したら、それはわたくしの周りにもたくさんいる、
ただのJKのお小遣い稼ぎと同じになってしまいます。
わたくしの場合は、相手の男の方が自信をお持ちになって何かにチャレンジし、
成果を上げることができるよう、そのお手伝いをするだけでございます。
そのために、わたくしの全てを投げ出して参ったのでございます。』
「あ、お金って、あ、その、そう意味じゃなくって。」
(昔で言えば援助交際。今風に言ったらパパ活ってやつ?
それと勘違いしちゃったじゃないか。まったく。)
『いえ。わたくしがお金のために、この身体を投げ出すように思われてしまったのは、
全くの心外でございましたので、申し上げたまで。
ですから、わたくし、朔太郎様にも、そうしたお礼をして差し上げたく、
ずっとお探ししていた次第でございます。』
「ボ、ボクにも、ですか?」
(えっ?じゃあ、お金は払わなくてもいいってこと?
タダでやらせてくれるっとこと?)
『はい。わたくしの全てを投げ出して、朔太郎様に自信を持っていただけるよう、
お手伝いさせていただきたいのでございます。』
「身体を投げ出して……。」
(やっぱ、オレの勘違いかなあ。自信を持つためのお手伝い?
させてくれるってことじゃないのか?
はっきりと聞くわけにもいかないしなあ。)
『正直におっしゃってください。
今、朔太郎様が一番自信がない、と申しましょうか、
自信を持ちたい、と思ってらっしゃることは何かございますか?』
「自信を持ちたいこと、ですか?例えば?」
『そうですね。思うようにいかないこと。
こうしたいと思っているのに、現実はなかなかそうはならない、
そのようなことでございます。』
(やっぱり、させてくれるってこと?)