再会 あなたのことが知りたい-6
正直、何をどうやって食べたかわからなかった。
味もメニューも、全く記憶がなかった。
しかし朔太郎は夕飯を食べ終わるや否や、
膝が痛いことも忘れたようなすさまじい勢いでバスルームに向かい、
頭の先から足の先までしっかりと洗い終えるや否や部屋に戻り、
下着からシャツ、ズボンまですべて洗い立てのものに着替え、
気持ち的には正装に着替えたような真剣さでスマフォを手に取った。
(まだ7分、ある。)
(何から話そうか。まずは昨日のお礼だよな。それから……。
そうだ。昨日、駅で会う前に、どこで何をしていたか、だよな。
あれ?でも、これってなんか彼女のアリバイを聞いているみたいだよな。
彼女のことをなんかの犯人扱いしているみたいだ。
でも、そうは言うものの、女子高の教室から露出してた女の子が、
彼女と同一人物なのかは興味あるよなあ。
でも、昨日、女子高の教室で男子校の校舎に向かって露出してましたか?
なんてこと、いきなり聞いたらさすがに失礼だよな。)
朔太郎の股間はサクミとの会話を想像するだけなのに、早くも反応をし始めていた。
(いかんいかん。何のための正装だ。
紳士的にいかなくっちゃ。
あ、そっか。
まずは文化祭の時の写真。あれがまずは確実な話題だ。
だけど、オレの検索にリストアップされて、なんて話は無しだな。
でも、検索項目自体は、そんなに問題はないよな。
身体的特徴ったって、およその身長とか、細めの顔立ちとか、ロングの黒髪。
そんなところだもんな。
あ、露出癖がありそうとか男好きとかは入れてないけど、
バストが大きそうは入れてあったっけ。
ま、肩を貸してもらった時に、偶然、そう、あくまでも、偶然、たまたま、
胸に触れちゃったってのは、あっちだってわかってるだろうからな。
胸の大きさは彼女も自覚してるだろうし。
ま、とにかく落ち着け、落ち着け。
慌てず、焦らず、諦めず。
あ、よし。時間だ。
『はい。サクミです。』
「朔太郎です。」
『はい。お待ちしていましたです。』
「あ、あの、その話し方って……。」
「ア、これですか?これは、癖と申しましょうか、緊張からと申しましょうか。
ただ、はっきり申し上げて、緊張しておりまする。』
「あ、ぼ、ボクも、緊張、してます。あの、だって、あ、でも、顔が……。」
『あ、マスクをしておりましたから、顔はご覧になってらっしゃいませんのでしたね。
やはり、気になりまするか?どんな顔か。』
「あ、いや。あの、中学校の時の写真は、ボク、今、手元にあるんです。
昨日からずっと検索して……。あ、いや、探してて。」
『それほどたくさんのお写真があるのでございますか?』
「あ、いえ、そ、そんなには……。」
『でも、よくわたくしの写真など残しておかれましたね。』
「あ、いや、ボクは、写真が趣味というか、目指してるっていうか……。」
『カメラマン志望なのでございますか?』
「あ、いや、父親が、その、カメラマンというか、写真館というか。』
『あ、やはり。写真館がご実家ですか。』
「あ、いや、今はもう、父親も亡くなって、写真館も、やめたというか……。」
『ああ、だから調べても見つからなかったのでございますね。』
「調べたんですか?ボクの家を。」
『あ、はい。申し訳ございません。
わたくし、昨日、うれしくて、というか、驚いて、というか、
かなり気が動転してしまいまして、
帰宅中に自分でも思わぬ行動をしてしまったのでございます。【検索】』
「思わぬ行動?(なるほど……。)」
朔太郎は露出のことだと確信した。
「お、お、思わぬ行動って……あ、でも、ボクは気にしていないっていうか、
あ、いや、興味も、あります、し。【露出】」
『朔太郎様も同じようなこと、なさいますでしょ?【検索】』
「あ、ぼ、ボク、ですか?あ、はい。い、以前は、何度か。【露出】」
『以前に何度か?その程度ですか?
わたくしは、日常のようにしておりますが、昨日ほど夢中になってしまったのは、
初めてのことでして……。【検索】』
「あ、昨日は、夢中に、なられて、た、わけですね。【露出】」
『はい。なんとしても朔太郎様にお会いして、きちんと気持ちをお伝えしたくて。
それで夢中というか、必死でしておりました。【検索】』
「ぼ、ぼくに、会うために、必死になって、やられてたんですか?【露出】」
『ええ。昨日は電車の中だけでなく家に帰ってからも、いろいろと。【検索】』
「えっ?で、で、電車の中でも?【露出】」
『ええ。でも、普通、じゃないですか?電車の中でなんて。【検索】』
「えっ?いや、ボクは、さすがに電車の中では……。
えっ?サクミさんは、電車の中でも、よくするんですか?【露出】」
『はい。わたくしは時々ですけど。
あまり混雑した車内ですと、他のお客様にもご迷惑が掛かりますから、
さすがに控えますが、帰りの電車はさほど混んでいないので、よくしております。
あ、お友達の中には授業中にしていらした方もいらっしゃいましたけど。
わたくしはさすがにそれは先生に失礼かと。【検索】』
「は、はあ。そ、そうなんですか。お友達も……。【露出】」
『えっ?そんなに珍しいことですか?【検索】』
「いや、珍しいというか、いや、そんなに普通に皆さん、やられてるなんて……。
いや、ボクはそういう場面に出会ったことがなかったものですから。【露出】」
朔太郎は今どきの女子高生にとって、あの程度(の露出)は普通のことだと聞き、
股間は爆発しそうに勃起状態になっていた。