サクミと朔太郎-2
「もっときちんと消毒して、冷やした方がよいかと。」
「あ、いや、ほんと、大丈夫ですよ。」
「いえいえ、早めにきちんと治療をしなければ。
あの、少しなら歩けますか?」
「えっ?歩く?」
「ええ。すぐ近くです。わたくしが通っていた学校の保健室。
そこまで行けばきちんと消毒して、冷やして差し上げることができるのですが。
わたくしが肩をお貸しします。歩けますか?」
(肩を貸す?えっ?そ、そんな感じで、歩いていったら、
うっかりよろけちゃって、彼女にもたれかかっちゃったりして……。
また、あの柔らかい胸、あ、ごめん、なんて言っちゃって……。
あ、大丈夫ですよ。しっかりつかまってくださいね、なんて言われて、
ああ、腕が胸が当たったりしちゃったりして……。)
「あ、いや、肩を貸していただ……いただけるなら、少しくらいなら……。多分。
あ、でも、よろけちゃうかも、知れないけど、肩、貸してもらおうか、なあ。」
「わたくしがしっかり支えますから。お立ちになれますか?」
(お立ちになれますか?立ってます、立ってますよ、もうさっきからずっと。)
「学校までは、5分くらい、あ、いや、もう少しかかるかもしれません。」
(学校?あの女子高?で、どこへ連れてくって?保健室?あの保健室か?
スペシャルなベッドとスペシャルな部屋があるんじゃねえのか?
マジかよ?これって、まさに千載一遇のチャンスなんじゃねぇ?
消毒?冷やすだけ?これだけ熱くしておいて、そう簡単には冷えないぜ!
いやいや、もっと他に傷がないか、全身調べてもらった方がいいかなあ。
それで、消毒の代わりに傷を舐めてもらっちゃったりして。)
(あ、全身打撲で全身腫れて来ちゃって、水のシャワーでもかけてもらっちゃって。
その後、少し冷えたから温めてくれます?なんて言ったら、
じゃあ、わたくしの身体で、なんてことになって……。
気が付いたら、汗まみれで、保健室のベッドのシーツが濡れ濡れでさ。
あら、いけない。わたくしとしたことがつい夢中になってしまって。
わたくしが汗ばんでしまったのか、それとも別の理由で濡れたのかしら、
あら。あなた様のここ。ああ、いつの間にか、
こんなに大きく腫れてしまいましたね、なんて言われちゃって。
ア、ほんとだ。いや、まだまだ大きく腫れるんですけどね。
いっそのこと、あなたの中で鎮めていただけますか?
なんて言ったら、
いえ、せっかくここまで大きく腫れあがっているんですから、
すぐに鎮まってしまってはもったいないですわ。
ねえ、もっと腫れさせてから頂いてもよろしいかしら、なんて言われちゃって……。)
(でもって、でもって、オレのをしっかりと握りしめた彼女が、
あら?膿でも出てるのかしら。先っぽの部分が粘々しているわ。
いえいえ、それは膿などではありません。
あなたがあまりにも魅力的だから。
ええ。もちろん、わかっていましたわ。
あなたの我慢汁の味、味見させていただいてもいいかしら。
なんてことになっちゃったりして……。)
(まあ、あなたのここもですが、膝のほうもだいぶ腫れて来ましたわ。
ここはもっと腫れさせていただいて構わないのですが、
膝がこれ以上腫れてしまっては、今後に響きます。
ねえ、今夜はもう歩かない方がいいですわ。
そうだわ。ここでお泊りになったらいかがです?
もちろん、わたくしが一晩中、看病させていただきますから、
なんて言われちゃったりして〜〜〜。)
(あ、そ、そうですね。ほんとだ。これじゃあ、歩けそうにもないかなあ。
もう、泊まるしかないですよね。なんてね。
ひ、膝が痛いだけなので、膝まづくような体位じゃなければ……。
あ、そうだ、上に、ボクの上に、乗って……。
いきなりこんなお願い、失礼ですよね?
ああ、わたくしとしたことが。そうですわよね。その方が確かによろしいかと。
では、失礼して、上に乗らせていただいて、わたくしが上で動きますから、
あなた様はじっとしていてくださって結構ですわ。
あ、でも、時々は突き上げてくださいな。
なんて言われちゃったりしてさ。)
(おい。いよいよだぜ。おい、朔太郎。初めてが騎乗位?
騎乗位で童貞卒業?
待った甲斐があったなあ。早まらなくてよかったなあ。
ああ、転んでよかった。
駅の階段万歳。外出自粛で、すっかりなまった身体よ、足腰よ。
見事に絡まってくれてありがとう。ああ、生きてきてよかった。)
「もしもし。」
「………………はいはい。今、突き上げますよ〜。」
「もしもし、大丈夫ですか?」
「…………あ?大丈夫、大丈夫。膝さえつかなきゃ、いくらでもいけますから。」
「あの、お客様。あの、学生さん。もしもし。」
「……なんだ、よそよそしいなあ。朔太郎って呼んでくださいよ。」
「あの、もしもし。わかりますか?」
「…あはは、もちろん、わかってますよ。あ、でも、まだ名前を……。」
「あ、いや、朔太郎さんとおっしゃるんですか?もしもし?」
「…はいはい。そうです。朔太郎。あなたの、朔太郎ですよ。」
「あ、あの、大丈夫ですか?朔太郎さん。わかりますか?目を開けてください。」
「…なになに?目を開けて、わたしのいやらしい姿をしっかり見て欲しいと?」
「いえ、ちっともいやらしくないんですけど、目、開けてください。」
「・はいはい。今……。あれ?どちら様、ですか?」
「あ、この駅の駅員です。ああ、確かに鼻血が凄いですね。
あれ?でも、顔の方はぶつけたような形跡はないですけどねえ。
とにかく医務室までお連れしますから、どうぞ。」
朔太郎が辺りを見回すと、女子高生の姿はもうどこにもなかった。