尊大な男-3
「よし、次はこっちだ」
もう片方の乳首にも同じようにしつこく液体が塗り込まれていく。
「んふっ……んんっ、んっ、んっ……!」
「鼻息が荒くなってきたじゃないか。ここは学校ですよユリ先生。恥ずかしいと思わんのかね。……脚を開きなさい」
「んぅ……」
おずおずと開いた両脚の間に顔を近づけ、校長は鼻で大きく深呼吸をする。
「スゥーーー…ハァーーー…。いやらしい匂いをさせおって……まったくけしからん……!」
さんざん乳首を刺激されたせいで、ユリの股間はびっしょりと濡れてしまっていた。
「教師という責任ある立場でありながら男性教師や男子生徒たちを誘うなど言語道断だ」
誘ったりなんかしていない、そんなことはありえない――。弁明の言葉をハンカチが遮る。
「よし、私がきれいにしてやろう…」
校長はベロリと舌舐めずりをして、ユリの股間に唇を押し付けた。そしてジュルルッと音を立てながら溢れ出した体液をすする。
「んっ! んっ! んん……!」
「ハァ……ハァ……なんてスケベな味だ、不謹慎極まりない」
何度もすすった後、校長は再び筆を手に取り小瓶に浸した。
「ここにもたっぷりと……」
校長の指で割れ目を押し開かれ、そこにもまたあの液体をしつこく塗り付けられる。
「んふっ! んっ! んむっ!」
襞の隅々までまんべんなく筆でなぞられる。こんな『道具』で刺激された経験など今まで一度もなく、ユリの腰は悩ましくくねってしまう。
「そろそろ仕上げといくか……」
滴る筆先がユリのクリトリスに触れた。
「んぅぅっ!!」
硬いような柔らかいような、なんとも言えない初めての感触にユリの腰がビクンと跳ね上がる。
「こらこら、おとなしくしたまえ」
クリッ……クリッ……クリッ……と、濡れた毛束はユリの一番敏感な突起を転がしてくる。
「んっ! んむぅ! フーッ、フーッ……! んんんんっ……!」
筆の動きに合わせてユリの腰が何度も何度も跳ね上がる。とてもじっとしてなどいられない。
「様子がおかしいじゃないか、ユリ先生」
筆は徐々に速度を上げてクリクリクリクリと執拗に突起を刺激し、ユリの性感もゾクゾクと高められていく。絶頂はもう目前まで迫っていた。
「んっんっんっんっ……! んふっ! ふぅぅん……!」
「ほれほれ……!」
校長は器用に筆を操りユリを追い立てた。もう少しでイッてしまう――その瞬間、昼休みの終了を告げるチャイムが鳴り響いた。
「おぉ、こんな時間だ。さ、服を着たまえ」
校長は筆を置き、ユリの口を塞いでいたハンカチを引き抜く。ユリは茫然としたままハァハァと荒い呼吸を繰り返した。
「急ぎなさい。午後の授業が始まってしまいますよ」
……そうだ。ユリは授業に行かなければならない。生徒たちが待っているのだから。
よろよろと体を起こし、ユリは床に落ちたシャツを拾う。だが、下着とストッキングが見当たらない。辺りを見回してもどこにも落ちていない。
「これを探しているのかね」
振り返ると、何食わぬ顔の校長がユリの下着をヒラヒラと振っている。
「これは私が預かっておこう。こんないやらしい下着は教師に相応しくありませんからな」
「か、返してください……!」
「授業が終わったら返しますよ。さあ、そろそろ本鈴だ。しっかり職務に励みなさい。それが教師の務めというものだ」
もう時間がない。ユリは諦めるしかなかった。仕方なく素肌にシャツを着る。透けて見えてしまわないように、急いで職員室へ戻りジャケットを羽織らなければ――。
焦るユリの耳元で校長が低く囁いた。
「4時半に旧校舎3階の男子トイレに来なさい。特別授業の続きだ……」
ジャケットでどうにか隠しているものの、胸の突起が透けて見えているんじゃないか、何かの拍子に気づかれてしまうんじゃないかと気が気ではなく、ユリは午後の授業にまったく身が入らなかった。平静を取り繕ってはいるが、衣服の下には何も着けていないのだ。ペンの一本でも落とせば生徒たちの目の前でかがまなくてはならないのだから、一瞬も気が抜けない。
だが、ユリを苦しめているのはそれだけではなかった。胸の先端がシャツに擦れてツンと上を向いてしまい、一向に治まらないのだ。そして股間は絶えることなくじっとりと体液をにじませ続け、ユリは休み時間のたびにトイレでそれを洗い流さなければならなかった。きっと昼休みに塗り込まれたあの液体のせいだろう。あれは媚薬のようなものだったのだ。
無表情にしていても、ユリの体は火照りつづけていた。絶頂寸前まで追い詰められ性感が最高潮に達した状態を、媚薬が強制的に持続させているのだ。乳首もクリトリスもジンジンと脈打つように疼き、おかしくなってしまいそうだった。
*****
やっとの思いでどうにかすべての授業を終えると、ユリは重い足取りで3階へと向かった。できることなら行きたくないが、行かなければどうなるか分からない。それに、下着も取り戻したかった。嫌いな人間が自分の下着を持っているなど耐えられるはずがない。
廊下の窓から見下ろすグラウンドには、運動部の生徒たちのはつらつとした声が響いている。そのあまりの眩しさにユリは目を逸らした。とても直視できなかった。
辺りを見回し誰もいないことを確認して、ユリはそっと男子トイレに入る。だが、そこには誰の姿もなかった。まだ来ていないのだろうか。もしかしたらこのまま来ないのかもしれない……。
少しだけホッとしたのもつかの間、男子用の小便器の向こう側、三つ並んだ個室の一番奥だけ扉が閉まっていることに気づく。使用中を知らせるノックが返ってくることを期待しながら、ユリはその扉を小さくノックした。
「入りなさい……」
抑えた声とともに鍵の開く音が聞こえ、ユリの淡い期待は打ち砕かれた。