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ある女教師の受難
【教師 官能小説】

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小さな事件-1

――いっそのこと、教師なんて辞めてしまおうか。

 大学卒業後、ユリが高校教師として働き始めて今年で4年目になる。かつての同級生達が次々と結婚し、出産したという話もチラホラ聞く年齢だ。一方、ユリはまだ独身で今は恋人もいない。チャンスが全くなかったわけではないが、教師になりたいという夢を叶えたばかりの今、早々に家庭に納まる気もまたなかった。
 夢を叶えることができたとは言え、ユリは悩んでいた。志を持って教師になったが、今の自分は思い描いていた理想の教師像とはかけ離れていたからだ。
 ユリは元々が真面目で理性的な性格だ。教師という仕事にも真剣に取り組み今までやってきた。だが、とっつきにくいとかお高くとまっているなどと言われてしまうことも少なくない。良く言えば「真面目で冷静」だが、裏を返せば「堅くて可愛げがない」ということなのだろう。
 その真面目な性格が災いしてか、ユリは生徒達からもなかなか信頼を得られずにいた。

 そんなユリの迷いを、生徒達は無意識に感じ取っているのだろうか。
 年頃の男子生徒達はユリのことをどこか甘く見ている節があり、教師というよりはただの女、性の対象としか思っていないようだった。
 ユリはどちらかと言えばボリューム感のある、言わば肉感的な体型だ。艶やかな髪は真面目すぎる性格を象徴するかのようにきっちりとアップスタイルにまとめあげられている。そして細いシルバーフレームの眼鏡。コンタクトレンズを何度か試みたこともあるがどうしても馴染めなかった。
 ユリ自身は意識しているわけではないのだが、いかにもアダルトビデオに出てくる女教師のようなその容姿も甘く見られる原因の一つなのだろう。時々からかい半分に「一回ヤらせてよ」などと言ってくる生徒もいて、ユリはその扱いに困っていた。

 男の欲望をかき立てるタイプの女というのは同性からは嫌われるものだ。「ムカつく」「調子に乗ってる」「嫌い」――女子生徒達から、ユリは何度陰口を叩かれたことか。彼女達にしてみれば、ユリは男をたぶらかすいけ好かない女、ということになるのだろう。
 その気持ちは分からなくもない。ユリが高校生の頃だったらきっと同じように感じたはずだ。想いを寄せる男子が大人の女教師にたぶらかされて自分のことなどまるで相手にしてくれなかったとしたら、悔しくて憎らしくて堪らないに決まっている。
 もっとも、ユリには男子生徒達をたぶらかすつもりなど毛頭ないし、性の対象としか見られないことに教師としての虚しさを感じていたが、まだ発育途上の生徒達にはそんなことは理解できないだろう。

 生徒に信頼され自らもまた生徒を信頼する、そんな教師になりたいと思っていたのに現実は理想とは程遠く、ユリはすっかり自信を失ってしまった。
――初めから向いていなかったのかも知れない。なら、キッパリと辞めてしまった方がいいのではないか。
 だがそう簡単には踏ん切りがつかず、苦悩しながらもただの職業教師に甘んじる日々を送っていた。

*****

 事件が起きたのは春の終わりのことだ。時刻は夜7時を少し過ぎた頃。仕事を終えて帰っていく同僚達を余所目に、一人職員室に残ってテストの採点をしているユリの元に一本の電話が入った。
 電話の主は学校から程近い繁華街にあるゲームセンターの店長だと名乗り、『お宅の生徒さんが揉め事を起こして困っているからすぐに引き取りに来て欲しい』と言う。生徒の名前を尋ねると、それはユリが担任を受け持つクラスの、それも素行に少し問題のある男子生徒だった。
 ユリは慌てて身支度を整え、急いで繁華街へ向かった。

 ゲームセンターに駆け込み手近な店員を捕まえて事情を説明すると、店員は建物の奥にある事務室へとユリを案内した。殺風景な部屋の中央には簡素な応接セットがあり、そこに4人の男が座っている。
「宮下君! どうしたの? 何があったの?」
 仏頂面で座っている教え子の顔を見つけ真っ先に問いかける。だが、宮下悠司はチラリとユリを見た後、無言でそっぽを向いてしまった。
 まあまあ先生、と奥に座った男にたしなめられユリは我に返った。まだきちんと挨拶もしていない。何しろ、教え子が問題を起こして呼び出されるなど初めてのことだ。自分が思う以上に動揺していたのだろう。恥じ入りながら教え子の隣に腰を下ろす。

 奥に座っている男――ユリをたしなめた男が、先ほど連絡をくれた店長だった。
 聞けば、悠司が他校の生徒に暴力を振るったと言う。店内で揉め事は困ると止めに入って引き離したのだが、どちらもまだ高校生のようだしこのまま帰すわけにもいかないだろうということで双方の両親に連絡しようとしたらしい。だが悠司は両親の連絡先を頑として教えず、仕方なく学校へ連絡してきたのだった。
 話を聞き、ユリは思案に暮れてしまう。本来ならばすぐに学校に報告しそれなりの処遇を与えるべきなのだろうが、ユリは出来れば大事にしたくなかったのだ。


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