思い出はそのままに-50
浩之は、美由紀を見た。祐樹が、舌を入れ始めていた。
「ん、んん!?」
美由紀が暴れだした。気がついたのだ。だが、祐樹は止めようとはしない。暴れる美由紀の顎を掴んで、激しく舌を動かす。
「んー! んんっ! いやあああ!! あむ・・・あんん・・・んんんーーー!!」
浩之は、唇を噛み締めた。美由紀の唇を、祐樹が奪っている。激しく舌を動かしている。憎悪で胸が張り裂けそうだった。
美由紀は、何が起こってるのかわからないのだろう。ひたすら暴れている。だが、しばらくすると様子がおかしくなってきた。顔が赤くなり、太腿を擦り合わせる。
「あん・・・あふぅ・・・ふぁあ・・・ああ・・・あふぅ・・・」
美由紀の目が、トロンとしてきた。声も、甘いものが混じり始めたいる。体をよじらせて、太腿を盛んに擦り合わせている。
美由紀が感じている。信じられないことだった。美由紀が、祐樹のキスごときに感じている。今すぐ美由紀の側に駆け寄って、祐樹をぶち殺してやりたかった。
「ふふ・・・お姉ちゃん、こんなに顔、赤くしちゃって」
祐樹が唇を離す。美由紀が、大きく息を吐いた。キスの余韻に浸っているように思えた。それを、祐樹が嬉しそうに見ている。祐樹が、美由紀の頬に触れようとした。
「いやっ!」
美由紀が、祐樹をキッと睨む。祐樹は一瞬、驚いたような顔をしたが、まだ表情には余裕があった。まるで、すぐに堕ちるとでも言っているかのようだった。
「ゆ、祐樹! これ・・・これなんなの!?」
美由紀は暴れるが、身動きは取れない。手足が縛られている。
「美由紀!」
「ひ、浩之くん!」
「待ってろ! 今助けてやるからな!」
浩之は、とっさに立ち上がった。どうなってもいい。ただ、美由紀を助けられればいい。そう思った。
「キャハハハ! お姉ちゃんは、このお兄ちゃんが、どういうことをしてきたか知ってるの?」
祐樹が笑った。浩之は嫌な予感がした。
「お姉ちゃんに、見せてあげよう! このお兄ちゃんが、どういうことをしてきたかをね!」
祐樹がリモコンを手にした。それを、テレビに向ける。
「や、やめろ!!」
浩之は、祐樹が何をしようとしているのかがわかった。浩之が、もっとも恐れていることだ。止めさせようとした。だが、遅かった。
「ああっ、あっ、お兄ちゃん!」
美奈が喘いでいた。相手は、浩之だった。
「な、なんなの・・・これ・・・」
「くっ・・・」
浩之は、床に膝をついた。テレビに映っているのは、美奈を抱いている浩之の姿だった。
「ひ、浩之くん! なんなの、これ!?」
浩之には答えられない。答えられるはずがなかった。美奈のような子供を抱いていたなどと、口が裂けてもいえない。美由紀にだけは、絶対に知られたくなかった。
「キャハハハ。お兄ちゃんすごいね! こんな子供とエッチしてるんだもん。これ、犯罪だよ!」
「う、嘘でしょ・・・」
「嘘じゃないよ。ほら、お姉ちゃん。あそこに、相手の女の子がいるでしょ。お兄ちゃんは、毎日この女の子とエッチしてたんだよ。それだけじゃないんだ。お兄ちゃんは、その隣にいる女の子ともエッチしているし、お姉ちゃんが尊敬している沙織先生ともエッチしてるんだよ。なんなら、見せてあげようか? キャハハハ!」
「よ、よしてくれ・・・たのむ・・・」
『謝れ』と言う声が聞こえる。子供達は、浩之を笑った。浩之を見下した目をした。ぶち殺してやる。そう思った。だが、浩之は黙って頭を下げた。
あの時と同じだ。何も変わってはいない。
美由紀が、浩之を蔑むような視線で見ていた。
「キャハハハ! わかったでしょ、お姉ちゃん。あれが、お姉ちゃんが好きだった男だよ。お姉ちゃんは間違ったんだよ。こんな男は、好きになってはいけなかったんだ!」
「ああ・・・うそ、うそよ・・・」
美由紀は泣いていた。
違うんだ。そう言おうとした。だが、言えない。浩之が、何を言えるというのだ。
「さあ、お姉ちゃん。ボクを受け入れるんだ! お姉ちゃんにふさわしい男は、ボクしかいないんだ!!」
「イヤアアア!!」
祐樹が、美由紀のシャツを引き裂いた。ブラジャーも引き裂く。美由紀に乳房が露わになった。肌の白さが際立っていた。
「やめろ!」
「ダメッ!!」
美奈が抱きついてきた。浩之は振り払おうとしたが、美奈は必死にしがみついてくる。