思い出はそのままに-49
「なんで、姉弟なのか! ボクは運命を呪ったよ! ボクが弟でなければ、お姉ちゃんはボクを好きになったはずなんだ。お兄ちゃんのようなクズを好きになることはなかったし、ボクがこんなに苦しむことはなかったんだよ! クソ、クソ、クソ、クソ、クソ!!」
祐樹は、地団太を踏んで罵っている。怒りで、不安定になっているようだ。祐樹らしくない。不気味だった。何をするかわからないという怖さを感じた。
「美奈は、お姉ちゃんの代わりさ。ちょっと優しくしてやったら、すぐにやらせてくれたよ。さすがにあの淫乱の娘だ! キャハハハ!」
祐樹が、狂ったように笑う。美奈が、拳を握り締めていた。
「暇つぶしに美奈とエッチしてたら、それを覗いている奴がいるじゃないか! まったく、年下のエッチを盗み見て、よく恥かしくないと思ったよ! ボクになら、耐えられないね。プライドが許さないよ」
「くっ・・・」
浩之は、何も言い返すことは出来なかった。祐樹の言うとおりなのだ。年下の、しかも子供といっていい年頃の性行為を盗み見た。そんなことは、まともな人間のやることはことではない。浩之は、男として恥かしいことをやってしまったのだ。恥かしかった。死にたいくらい恥かしかった。
「だから、ボクはお兄ちゃんをペットにしてやろうと思ったんだよ。ボクのセックスを見せつけて、ボクに逆らえないようしてやろうとおもったんだ」
それで、浩之にビデオを撮らせるなんてことをさせたのだ。結局は、浩之に見せつけたかっただけなのだ。
それを聞いて、浩之は笑った。
「残念だが、うまくはいかなかったようだな」
「ハハッ、なに言ってるの。そんな情けない姿で!」
「もう終わりさ、どちらにしろな」
「そうだね。終わりだよ。でも、気づいたんだ。本当に欲しいものがあるなら、力ずくで奪えばいい。全てを失ってもね。健太を見てると、つくづくそう思うよ。そう・・・もっと早く気づくべきだったんだ」
「何を言ってるんだ?」
「言ったでしょう。力ずくで物にするんだってね。そうそう、いいこと教えてあげるよ。お姉ちゃんに電話したのは、美奈なんだよ。美奈が、お兄ちゃんに彼女がいるって、電話してたんだ。ボクも気づかなかったよ」
「ばかな・・・」
浩之は、祐樹だと思っていた。祐樹が、浩之を美由紀から遠ざけるためにしたと思っていた。
「ごめんなさい!」
美奈が抱きついてきた。
「あんな女なんかに、お兄ちゃんを取られるなんて、許せなかったの! お兄ちゃんには、ワタシだけを見て欲しかった・・・」
おまえと美由紀を一緒にするな。積み上げてきた思いが違うのだ。浩之は、そう叫びたかった。浩之は、ずっと美由紀だけを見つめてきたのだ。それを、こんな子供にぶち壊されるなど、許せなかった。
「ふふ。うらやましいね。じゃあ、ボクもそろそろ始めようとするか」
美由紀は制服姿で、ベッドの上に寝かされていた。手足を、柱にくくりつけられている。
「昨日、お兄ちゃんは、この唇を奪ったね。身の程知らずが。お姉ちゃんの唇が、汚れてしまったよ」
「何で知ってるんだ!?」
「カメラが仕掛けてあるんだよ。お兄ちゃんの家には、どこでもね。昨日は驚いたよ」
カメラが仕掛けられているなど、気づかなかった。どこかで、祐樹を甘く見ていた。たかが子供だと、思っていた。
「カメラをしかけたのは美奈と菜美だよ。喜んで、協力してくれたよ」
「本当なのか?」
美奈はうなずいた。
「沙織も仕組んでいたのか?」
「ママは違う! やったのは、ワタシと菜美よ・・・お兄ちゃんを、ワタシたちのところにもどしたかったの・・・」
「なんてことだ・・・」
「お兄ちゃんは、美奈で我慢してればよかったのさ。身の程知らずにも、お姉ちゃんに手をだすから。ああ・・・この唇は、お兄ちゃんに奪われてしまったんだね」
祐樹は、美由紀の唇をそっと指先で撫でまわる。
「ああ・・・ボクがしっかりしていれば、こんなことにはならなかったのに・・・」
祐樹の唇が、美由紀の唇に近づいてく。
「や、やめろ!」
祐樹が笑った。祐樹の唇が、美由紀の唇に重なる。そのまま、祐樹はキスを繰り返した。
「く、くそっ!」
浩之は、美由紀のところに駆け寄ろうとした。
「ダメッ! お兄ちゃん!」
美奈が抱きついてきた。
「離せ!」
「ダメよ! 暴れると、またスプレーをかけるわよ! 菜美!」
菜美がスプレーを持っていた。菜美は怯えていたが、美奈の目は憎悪で燃え盛っていた。浩之が抵抗すれば、躊躇なくスプレーを吹きかけるだろう。