思い出はそのままに-14
次の日、祐樹から連絡があった。美咲を連れてきたということだ。まさか、本気で連れて来るとは思わなかった。行きたくはなかったが、そういうわけにはいかない。浩之が言い出したことなのだ。
地下に行くと、すでに祐樹達がいた。菜美もいた。一人、知らない女の子がいた。
元気そうな女の子だった。美奈の活発さとはまた違う。美奈はノー天気という感じがするが、美咲は、委員長が似合いそうな生真面目さが漂っていた。
「この人は?」
美咲が浩之を見て言った。
「浩之お兄ちゃんだよ。今日の撮影をしてくれるんだよ」
「こんにちは、浩之さん。美咲と言います」
美咲がお辞儀した。
「あ・・・ああ。よろしくね」
随分、出来た女の子のようだ。
「おい・・・今日、なんて言ったんだよ」
浩之は祐樹のそばに行くと、小声で尋ねた。
「劇の練習だよ」
「劇?」
「まだずっと先だけど、市内の学校が集まる、劇の発表会があるんだ。ボクが脚本してるんだよ。一応、完成はしてるんで、流れでもやってみようと言うわけ」
「そうか・・・」
「とりあえず、お兄ちゃん。ボクにあわせてね」
「ああ、わかった・・・」
祐樹の勝ち誇った顔。足が震えた。本当にやるのか。浩之には信じられなかった。
「ねえ、祐樹くん。武士くんや菜美ちゃんがいるのはわかるけど、なんでこいつがいるのよ」
美咲は、健太を指差した。
「こいつってなんだよ!」
「こいつはこいつでしょ! アンタなんて、こいつで十分じゃない!」
「なにおっ!」
「おちつけよ、健太。ごめんね、美咲ちゃん。健太のやつは、大目に見てあげてよ」
「祐樹くんがあやまる必要はないわよ。あっ、菜美ちゃん、こっちに来なさい。健太の近くにいるとバカがうつるから。あーコワイコワイ」
美咲はそう言うと、菜美を自分の近くに引き寄せた。
「ちっ」
健太が悪態をつく。
「どうしたの? 菜美ちゃん。顔色悪いよ」
菜美は、これから美咲がどういう目にあうか知ってるから、顔色が悪いのだろう。
「美咲は、菜美を知ってるのか?」
浩之は祐樹に尋ねた。
「うん。美奈と菜美のお母さんは、ボクらの先生なんだよ。美咲は先生のお気に入りで、よく家にも遊びに言ってるみたいだから、仲良しなんだよ。ちなみに、武士もお気に入りなんだよ」
「エリートってわけか。おまえは?」
「ボクは嫌われてるよ」
「だろうな」
祐樹が笑った。
「武士くん。最近、先生の家に来ないのね。どうかしたの?」
「な・・・なんでもないよ・・・」
「ホント? 先生、寂しがってたわよー。武士くん、カワイイからね」
「そ、そんなことないよ」
「ちっ」
健太が、あからさまに不機嫌な顔をしている。
「なによ、健太! 武士くんも、友達選ばないと。こんなやつと一緒だと、品性が落ちるわよ」
「なんだよっ! 武士が俺と仲良くしてなにが悪いんだよっ!」
「なによっ! あーいやだいやだ。下品さが漂ってくるわ。もう・・・私、耐えられないっ! 武士くん、守って」
「まあまあ、それぐらいにして」
祐樹が二人をなだめる。いつまで続くかわからない罵りあいだ。
「とりあえず、始める前に、美咲ちゃんに見てもらいたいものがあるんだ。菜美」
菜美はためらっている。
「菜美、早く」
菜美は唇を噛み締めると、ビデオテープを持ってきた。デッキにセットする。
浩之は、祐樹が何をやるのかがわかった。震えが止まらなかった。
「武士くん。なんだろうね?」
「う、うん・・・」
武士は震えている。健太を見る。こっちも、緊張しているようだ。祐樹は、薄笑いを浮かべていた。
菜美がテレビをつけた。映像が流れる。
「ああっ! あああっ! だめぇぇぇ!!」
菜美が写っていた。菜美の上に、健太がのしかかっている。
「な・・・・・・」
美咲は固まっている。現実をうまく理解できてないようだ。
「くっ、菜美っ! 口をあけろっ!」
菜美の口を開けると、健太がその中に射精した。口の中に溜まった精液がアップになる。
「ハハッ、すごいよね、美咲ちゃん。健太は射精する量が違うからね」
祐樹が笑った。