レイニィガール-3
「いや、あのな。僕は君を鬱陶しく思ったりしてないから」
「それが云いたかったの?」
「まあ」
滝田の返事を聞いて、夕香は大笑いをした。
「やっぱり、先生って最高」
*
「ここで良いよ。そこ曲がって行ったら家だから。ありがとうございました」
ぺこり、と頭を下げる夕香を見つめて、滝田は深呼吸をする。
「ああ。なあ、相川」
「はい?」
顔を上げた夕香の視線が、滝田の視線と絡む。
「気をつけてな」
「うん」
「お菓子ばっか食うなよ」
「食うもん」
笑う夕香にちょっと待ってろ、と云って滝田は外に出る。助手席から出る夕香が濡れないように、傘を差し出した。
「感動ー。先生優しいね」
上機嫌で降りて、自分の傘を差す夕香。
青空柄。
滝田は彼女には雨の方が似合うのに、と思う。何故だろう。
「なに?この傘変?」傘を見つめていた滝田に気付くと、夕香は自分でも頭上だけの澄んだ青空を見る。
「ううん。なあ、相川」
「はいはい」
おどけて云う夕香の頭を撫でる。
「君は明日も、僕を好きかな」
「多分ね」
そう云って、夕香は手を振って歩いて行った。
彼女を家まで送る日は、いつ来るのだろう。
そう思う自分を確認して、滝田は苦笑する。
そろそろ自分の感情を無視するのも難しいようだ、と。
ありそうでなさそうな味のキャンディを、探しておかなければならなくなるだろう。
彼女にあげる為に。