春間近、別れをひかえて-3
キジ斗は震える声で尋ねた。
「とんでもないこと……って?」
「あなた、秋に学園の奏楽堂で合唱大会があった時、舞台の袖に隠れてて、ピアノの伴奏を終えて戻ってきたお嬢様に抱きついて、胸をもんだでしょ。」
「…………」
「あの時、裏方だった男子があなたを呼んですぐ離れたでしょ。でも、あなたには見えなかったでしょうけど、」
ひろ子は相変わらず、胸を揺らしながら言い続けた。
「舞台の袖に私と、お嬢様のおばさまと、学園の理事長がいて、あなたがお嬢様の胸をもむ瞬間を見てたのよ。」
「………………!!」
「おばさまは真っ青になるし、理事長は土下座するし、私も同級生のしでかしたことだから詫びたし……それから学園が内緒で作った第三者委員会が、あなた以外の生徒に聞き取り調査したの。みんな黙秘しなかったみたい。」
「……な、なのに」キジ斗はかすれ声で言った。「なんで俺には何のお咎めもないの…… なんで父は玉都に向かうことになったの?」
「さあ……」ひろ子は笑いを漏らしながら言った。「その処分私にも納得いかない。どう見てもお父様 栄転だもんね。ただ単に、あなたをお嬢様から離したかっただけじゃないの?」
ひろ子は両手をゆるめ、乳房の谷間からキジ斗のチンポを抜き出すと、谷間をティッシュでぬぐった。そして乳房を制服におさめると、キジ斗の顔に唇を寄せた。
キジ斗は別れのキスだと思った。
しかし、それはキジ斗のうぬぼれに過ぎなかった。ひろ子の唇は、キジ斗に短い言葉を投げつけただけだった。