1:1:1〜郡司佐和〜-6
学祭1日目の朝。
午前中は早が店番だったので、成と2人で学内を回ることになった。
絶好のチャンス!!と思ったあたしは、お祭り気分で盛り上がる生徒達が往来する廊下で、成をいきなり呼び止めた。
先を歩いていた成は振り返る。
胸がドキドキする。
でも言いたくてたまらない。
あたしはいきなりストレートに気持ちをのべた。
「成…あたし、成のこと好きだから」
確認するような言い方。
少しは気付いてくれてるよね?
そんな期待混じりの告白。
あたしは思いを告げることが出来、少し胸がすっきりした。
しばらく固まる成。
「…え……?」
「『え…?』…って」
なんだかあっけない返事に、がっかりした。
あたしは成の手を引いて人気のない場所へ連れてきた。
「気付いてなかったの?あたしの気持ち…少しも?」
あたしは成を社会科資料室に押し込むと、成を見つめた。
「それとも成…速答しないって事は期待してもいいの?」
あたしは後ろ手で戸を閉めた。
成の気持ちが知りたい。
薄暗い社会科資料室は古くさい資料がいっぱいで、少し埃っぽかった。
狭い教室内で、あたしは成から目を逸らさないでいた。
窓の外では放送やらBGMやらみんなの笑い声で、かなりにぎわっている。
一瞬早将の顔がよぎる。
あたしはたまらず成に近づいていく。
「成…お願い。返事が欲しい」
恋愛感情があるかないか…それだけでもいいよ?
あたしは不安で押しつぶされそうだった。
あたしはゆっくりと成に近づく。
体を強ばらせる成を無視して、あたしは背中に手を回し、成をぎゅっと抱き締める。
大きくてあったかくて、離れたくなかった。
「成…」
抱き締め返してほしくて、あたしは一層力強く抱きつく。
早将の顔がちらつく。
罪悪感と不安で涙が出そうになる。
成の重い口が開いたのは、それからしばらくしてからだった…。
「俺は…」
あたしは目を瞑って
成将の声だけに集中した。