１：１：１〜郡司佐和〜-3
「浮いたお金で飯でも食ってかねぇ？」
そう言って早将はアタシの返事も待たず、何を食べようか悩みだした。
あたしはその子どもっぽさが可愛いくて、クスッと笑みを浮かべた。
「俺ゴルゴンゾーラ〜」
「あたしカルボナーラ〜」
店員に白い目で見られるくらいあたし達はハイテンションでパスタを頼んだ。
「なーなー、今日見たのの２作目がやりだしたらまた一緒にいこうな？」
「いいよ☆成も一緒？」
言った瞬間、あたしはヤバッと一瞬顔を引きつらせた。
早将を傷つけてしまっただろうか…
あたしの気持ち、気付かれただろうか…
自分のせいで今の関係がギクシャクするのはいやだ、あたしのこの気持ちは心の奥底にしまっておくつもりだった。
でも気が緩んで、ついポロリと本気で聞いてしまった。
「しゃーねー。成の野郎も誘うか！」
ニカッといつもどおりの笑顔を見せた早将に、あたしは少しホッとして笑みを返した。
でもちょっぴり罪悪感。
ごめんね早将。
あたしは…
ある日の日曜日。
今度結婚する姉のために、両家で食事をすることになった。
食事の後、未成年のあたしは一人先に帰ることになった。
おいしかったご飯に満足してテクテク道を歩く。少し足が痛くて立ち止まった。
履き慣れないミュールのせいで、小指と親指の付けね辺りが赤くなっていた。
せっかくのいい気分が台無しだ…と顔を上げた瞬間、少し先に見慣れた後ろ姿が見えた。
あたしは無意識に極上の笑みを浮かべる。
「成ぃ〜!!」
人目も気にせず大声で成を呼ぶと、痛さも忘れ駆け寄っていく。
振り返った私服の成を見て、更に笑顔がこぼれた。
「どしたんすか？その格好」
普段なら履かないようなスカートとおしとやかな服を見て、成将はたずねた。
あたしは事の経緯を簡単に話す。
そして最後に一番聞きたいことをさり気なく聞く。
「可愛いでしょ？」
あたしは子どものようにクルリと回ってみせる。フワっとなるスカートが、さっきまでは気に食わなかったが、今は心地いい。
「……いいんじゃないの？」
「…なにそれぇ？超適当だし!!素直に『可愛い〜』って言ってよね!!」
「可愛イスギテ困ッチャウ」
片言でそう言った成将をあたしはブーブー言いながらこづいた。
「コーヒーでも飲む？奢るし」
「成、太っ腹〜!!」
成将の誘いに、あたしは手を挙げて速答した。
思わぬ展開に胸が鳴った。
デートだ!!
あたしは手を繋ぎたいのを我慢して成将の横を歩いた。
近くのカフェに入り、いつものように何気ない話をいっぱいした。
興奮したあたしは、自分でもおかしいかな？と思うくらいいっぱい喋った。