是奈でゲンキッ! 番外編 『シークレット・ガールズ』-7
それでも何台かの消防車やパトカーが駆けつけて来ると、逃げ惑う人たちを救助、誘導したりもする。
是奈は、とりあえず自分たちも避難しようと、彩霞の腕を引っ張って、出口へと向かって歩き出した。
そんな折に、ふと見ると展示用のショウケースが割られていて、中に有ったはずのSLのナンバープレートが一枚、無くなって居る。
「まさか都子のやつ…… どさくさに紛れてナンバープレートを持ち逃げしたんじゃねーだろうなぁ!」
彩霞は、無くなったナンバープレートが、さっきまで都子がよだれを垂らしながら、欲しそうに眺めて居た代物だっただけに、そんな事を思って苦笑いをするが。
「まさかあぁ〜〜っ!」
是奈も、それは無いだろうと、頭を掻いておどけて居た。
と、その時である。
”ルルルル〜 ルルルル〜”と、是奈の携帯電話が鳴り出したではないか。
「あっ、ごめん中村さん! 電話が来(き)ちゃったぁ。田原くんかもしれないから、ちょっとそのぅ…… ごめんねぇ」
慌てて是奈は彩霞から手を放すと、駆け出して外の方へと行ってしまう。
彩霞は、別にケガをしている訳でも無し、自分の事なら気にしなくてもいいぞっ! と、是奈を見送りはしたものの。
「そんな物(もん)、こう言った場所ではマナーモードにしとくだろ普通! ったっくしょうがないなぁ、どいつもこいつも自分勝手でぇ。少しは他人の迷惑ってもんを、考えろよなっ!」
そんな事をぶつぶつ言いながら、立ち止まって顔を膨らませたりもする。
「おっといけないっ! そんなこと言ってる場合じゃねーや。俺も早いとこ此処から脱出せねば」
思い出したかのように、右手の拳で左掌を ”ポンっ”と叩くと、彩霞もまた、慌てて博物館から出て行ったのであった。
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ちょっと前。
突然館内に鳴り響いた火災警報機のけたたましいベルの音に、館内に居た客は勿論、これから見学をしようと入り口に並んでいた大勢の人々も、何事かとその表情を驚きに変えていた。
そして突然建物全体から溢れ出した白い煙に、誰もが、館内で火災が起きたのだろうと思ったに違いない。
慌てて逃げ出すと、博物館の出入り口はあっという間に人の山で覆い尽くされていた。
そんな中、突然大きなガラスが割れる音か聞こえたかと思うと、次の瞬間、怪しいバタフライマスクで顔を隠した高校生ぐらいの女の子が、小脇に大きななSLのナンバープレートを抱えて、出口に集まった人達の頭を踏み台にしながら館内から飛び出して来たではないか。
「おーーほっほほほほぉ! 『デコイチ』のナンバープレートはこの怪盗ミーヤ様が、確かに頂いたぁ!!」
女の子は、そんな事を叫びながら勢い良く表通りへと飛び出すと、あっという間に走り去り、見えなくなっていた。
そしてそのすぐ後、普段とは打って変わり厳しい顔つきをした真由美が、やはり人々の頭上を飛び越えて現れるや。
「くっそう、やられたわっ!」
悔しそうにそう吐き捨てながら、ミーヤが逃走した先へと、その鋭い視線を送りながら、苦虫を噛んでいた。
真由美は直ぐさま、肩に掛けたいた可愛らしいピンク色のポーチバックの中から携帯電話を取り出すと。
「こちらエンジェル1(ワン)、ガーディアンZ応答せよ! こちらエンジェル1、緊急事態発生!!」
そんな事を携帯電話に向かって、しきりに叫んでいた。