是奈でゲンキッ! 番外編 『シークレット・ガールズ』-2
言われた都子の方は落ち込む気配もなく、それどころか益々持って、
「はいはいそうですかぁ! まったく、彩霞ってば夢が無いんだからっ!」
などと、負けず嫌いにも毒付きながら、口を尖らせていた。
さらには、彩霞に対して当て付けのつもりらしい、これ見よがしな態度でもって ”バサッバサッ”と新聞のページを捲り、彩霞と眼が合うと、
「フンだぁっ!」
挑発する様な態度でもって、そっぽを向いたりもする。
一方の彩霞も、
「たくよぉ、夢を持つのは良いけど、犯罪者なんかに共感してどうするんだよっ! 都子もまだまだ子供だなぁ!」
そんな事を言いながら ”フンッ”と鼻を鳴らして、彼女もまたそっぽを向き。
何とも険悪なムードだったりもする。
それでも数分後。
「えっ! 嘘ぉ! 信じらんなーいっ! 本気(まじ)ぃ!」
と、都子がまた、何やらかの新聞記事を見つけて騒ぎ出すと。
「今度はなあにぃっ!?」
側に居た真由美も、都子の驚きっぷりに、只事では無さそうだと目を丸くする。
「どうせまた、ろくでもない記事を見つけたんだろぉ」
腕組みをしてそっぽを向いていた彩霞も、都子の驚く声を聞いてか、内心、その都子を驚かせた新聞記事とはいったい何なのか、気になる様子である。都子を冷やかしながらも身を乗り出して、都子が驚きの表情と共に指し示す新聞記事へと、目を向けるのだった。
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長らく鉄道ファンに愛され続けて来た『交通博物館』が、その経営の困難を理由に、今年の春で閉館となる事と相成り。閉館前に是非、見学して置こうと訪れる鉄道ファンは元より、観光客や家族ずれなどで、当館内は連日大入り満員でごった返している。関係者各位に聞いたところ、近年に無い程の賑わいに、関係者一同嬉しい悲鳴を上げると共に、長らく鉄道と交通の歴史を展示してきた博物館が無くなる淋しさに、その心境も複雑との事である。
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「えぇ〜〜〜! 『交通博物館』無くなっちゃうんだぁ!!」
「わたし小学生のころ行ったことが有りましたけど…… 閉館って聞くと、なんだか淋しいですよね」
何やら庶民に愛されていた貴重な憩の場でも失ったかのように、拳を握り締め、悔しそうに叫ぶ都子を見詰めながら。なんとも淋しそうに瞳を潤々(うるうる)させて、真由美も元気が無い。
「しょうがないだろぉ。そう言う博物館とかテーマパークってやつは、維持費が掛かる割には客が来ないらしいし、鉄道会社が民営化されて依頼、赤字続きと有っては、企業縮小とかで撤退せざるを得ないんじゃないのかぁ」
彩霞は相変わらず素っ気無い態度で、そんな事を言った様だが、それでも当然のごとく今まで有った物が無くなるってのは、俺だって淋しいぜっ。と肩を落とし、俯いたりもする。
「ねえねえっ、こんどの日曜日、皆で行って見ない! 交通博物館!!」
「はぁっ〜〜!」
普段そんな物には全くと言っていいほど、興味など無い人間で有っても、いざ無くなると成ると、行って見たくも成るらしい。都子も漏れなく、最後だから記念に行って見ようよ! と、そんな事を言いだした。
だからと言って、
「お前なぁ、何時から鉄道ファンに成ったんだぁ。それにこんな時期に行ったって、人が多いだけで、たいした物見れやしないってっ」
どうやら彩霞までもが、興味を示すとは限らない。彼女は額に手を当てて、首を横に振るだけである。
「私は行って見たいと…… 思うけどぉ」
おおっ! なんといじらしい。どうやら真由美は都子の提案に賛同してくれるらしい。