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是奈でゲンキッ!
【コメディ その他小説】

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是奈でゲンキッ! 番外編 『シークレット・ガールズ』-12

 一方、そのころ彩霞は。
「どけーぇ! どいてくれーーっ! 通してくれーーっ!!」
 炎の中を逃げ惑う人々を掻き分けて、
「是奈ぁーー! 都子ぉーー! 真由美ぃーー!!」
 全身煤(すす)だらけに成り、細くて長い自慢の脚を傷だらけにしながら、ガレキと化し、廃墟となった街を、友達を探して、さ迷っていた。
 ときどき溢れ出る涙を、ボロボロに成った服の袖で拭き取りながら、それでも歯を食いしばって、3人を探して歩き続ける。
 しばらく行くと、前方の方で光の塊の様な物同士が、ぶつかり合い、火花を散らしている光景を見つけるや、きっとあそこに是奈達が居るに違いないと、脚の痛みも忘れて、急ぎその場所を目指して駆け出すのだった。


 都子と是奈は、互いに強力なエネルギーを放ちながら、どちらかが砕け散るまでと、繰り返し繰り返し、ぶつかりあっていた。
 ぶつかる度に、花火のような火の子が空に舞い、そんな戦いが何時果てるとも無く、続いていた。
 何度目かの打ち込みの時である。互いの身体が一つに重なった瞬間。
「是奈っ! 都子っ!」
 二人を呼ぶ声に、互いは腕を重ねたまま、同時に彩霞へと視線を送った。
「彩霞っ!」
「中村さんっ! 来ちゃだめぇっ!!」
「お前たち…… いったい何をやってるんだ!?」
 駆けつけた彩霞も、二人の変り様を見るなり、目を見開いて驚きの声を上げる。
 そんな彩霞の姿に、是奈と都子も一瞬、気を反らさせてしまう。
 その瞬間、張り詰めていた緊張の糸が切れたのだろう、制御を失い、ぶつけ合ったエネルギーの塊が大爆発を起こし、太陽のような眩しい光の渦が三人を飲み込んで、天高くその火柱を吹き上げたのだった。


 津波のように押し寄せる高熱と爆風が彩霞に襲い掛かる。
 彼女は眩しさに両腕で目を覆いながら、もう駄目だ! 自分はこのまま死んでしまうのだろう…… そう思っていた。
 だがしかし、何かが爆発の勢いを遮った。
 彩霞は眩しさに目を細めながらも、爆風を遮ってくれた物へと目を向けた。
 見ればそこには、両腕を一杯に広げて、光の壁のような物を張り巡らし、迫り来る炎と熱風を涼しい顔で押しのけている少女の姿があった。
 そして、更に爆発が激しくなると、少女は持てる力を最大限に発揮したのだろう、背中から真っ白で大きな翼を出し、優しく彩霞を包み込んでくれる。
 軟らかくて暖かい少女の羽に包(くる)まれて、守られながらも、その姿はまるでおとぎ話に出てくる天使そのものであると、彩霞は思っていた。
 

 核爆発にも似た巨大な爆発が収まった時、かつてそこに有ったはずの美しい公園も、都会と呼ぶにふさわしいビルの谷間も、跡形も無く消し飛んで、辺りにはガレキの山が残るのみであった。
 最早、生けとし生けるものが全て灰と成った今、廃墟には誰一人の姿も無く、ただ虚しく乾いた風が、通り過ぎるだけである。
 だがそんな廃墟の中にあって、気を失っていた彩霞であったが、自分を呼ぶ誰かの声に目を覚ます。
「中村さん…… 中村さん…… 大丈夫っ、中村さん」
 その声はとても優しく、何処となく懐かしくも感じた。
 大したケガも無く、どうやら助かったのだと、彩霞はホッと胸を撫で下ろすと。目を擦りながら、その優しい声の主へと視線を向けた。
 次第に視力も回復し、目の前に現れた人物がはっきりとした姿を現すと、彩霞は驚きの声を上げた。
「真由美…… 真由美なのか!」
 どうやらあの爆発の中、彩霞を助けてくれたのは真由美だったようである。


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