在った愛のかたち-4
それは最愛の残骸
おばあさんは聖母像に顔を向けると、再び祈りを捧げました。
どうか、私をおじいさんの所へと連れていって下さい。
おばあさんの祈りに呼応するかのように、聖母像からまばゆい光が放たれました。
その光に包まれながら、おばあさんの体は段々と昔の麗しき姿へと戻っていきました。
目の前には光だけ、おばあさんは光の中に手を差し出しました。
おばあさんは信じていました。絶対にこの手を握り返してくれることを。
差し出た手に、暖かな感触が伝わりました。
それは力強さを伴って、おばあさんを光の中へと引っ張っていきます。
光が開けた先には……。
おばあさんは、後悔はしませんでした。
息子たちも、街のみんなも、生まれ育ったこの街も、全てがおばあさんには愛しかったのです。
おばあさんはみんなを、全てを愛していました。
ですが、おばあさんはおじいさんと一緒に逝くことを選びました。
何故なら、おばあさんにとっておじいさんは愛の全てだったからです。
おばあさんは、ただおじいさんと一緒に居たかったのです。
例え死しても、生まれ変わっても。
それは二人にとっての愛の全て
日の落ちた教会で、二人は眠るように息を引き取りました。
二人の安らかな表情の理由は、聖母像だけが知っていました。