麗子の家での一夜-2
実はオレはユリカが現れてからずっと、ユリカのことを見ていた。
樹木酒を飲みながら何気なく視線の片隅にユリカを置いていたのだ。
ユリカの夫はリビングを出て行く前にユリカに何事か耳打ちをしていた。
それを聞きながらユリカはオレの方をじっと見つめ、
そしてカーディガンを脱いだのだ。
それもあっさりと脱いだわけではない。
あれは見られることを意識しながら、
つまりはオレに見せるために、わざとゆっくりと脱いだのだ。
カーディガンを脱いだことで、ユリカの身体のラインがハッキリとみてとれる。
グンと突き出したバストはかなりのボリュームだ。
(挑発?誘ってる?それにしても、見事なバストだ。)
オレの意志とは関係なく、オレのペニスはズボンの中で硬くなり始めた。
(そろそろ始める?いよいよセックスできるのか?ここで?
しかしこいつの夫は一体どこへ行ったんだ?
いずれ戻ってくるのか、それともこのままユリカと二人きりになるのか?)
オレが手を出したところで夫が戻ってくる。おい、それじゃあ美人局じゃないか。)
ここは黙っておとなしくしておくべきか。
いや、据え膳食わぬは男の恥。一応、確認しておくか。)
オレはユリカに思い切って聞いてみることにした。
「あの〜。旦那さんはどちらへ?」
「あ、アキラさんと一緒におもてなしに。」
「アキラさんと一緒に?」
「ええ。本当はアキラさん、この時間はフリーなんですけど、
他のおうちの方でトラブルがあったみたいで。」
「トラブル?」
「ちょっと詳しくは申し上げにくいことなんです。」
「はあ。」
「あまりお気になさらないでください。」
ユリカはそう言うと、グラスを持ったままいきなりオレの隣へ座った。
ユリカの息がオレの耳元に吹きかかるほどの距離だ。
そして少し愁いを帯びた目でオレを見つめながら話しかけてきた。
「樹木酒は初めてですか?」
本当に麗子の母親にそっくりだった。
顔も、身体つきも声も雰囲気も、麗子の母親、ヒカルと瓜二つだ。
そういえばさっきアキラは、抱いていても、
どちらだかわからないことがあったと言っていた。
抱いていてわからない?
ここの姉妹は夫も共有しているということなのか?
樹木酒のせいなのか、オレは聞きたいことを聞かずにはいられない雰囲気になってきた。
「はい。あの……失礼かとは思うんですが。」
「あ、はい。なんでも聞いてください。」
「なんでも、ですか?」
「はい。なんでも。」
ユリカの目が妖しく光り、ユリカはオレに身体を寄せてきた。
オレは酔いと勢いに任せて思い切って聞いてみた。
「あ、あのユリカさんは………アキラさんと……寝る、ことも、あるんです、か?」
完全なセクハラだ。訴えられたら終わりだ。
「寝る?あ、セックスのことですか?はい。もちろんです。
ほとんどヒカルと一緒ですが、時には別の方と一緒のこともあります。」
オレのセクハラ発言以上のセクハラ発言が戻ってきた。
「別の方?」
「はい。お客様の方からそのようなご要望がある場合は、
姉妹夫婦一緒にお相手することもありますし。」
「姉妹夫婦一緒、ですか?」
「そうです。わかりやすい言葉で言えば……6Pとか、8Pとか。
まあ、8というのはそうはたくさんありませんが。」
「6とか8?」
「パーティーみたいなものとお考えいただければ。」
「あ、パーティー……。はいはい。なんとなく……」
「今、ご希望されますか?」
「は?」
「ただ、急ですと、なかなか人が集まりませんので、6Pとかはさすがに無理ですが。
ご希望があれば、あと2人くらいまでは。
ただ、姉が戻ってくれば当然二人でおもてなしさせていただきます。」
「はあ………。」
「ただ、やはり他の方をお呼びするにはそれなりのお心づけを
先生の方から頂戴しなければなりませんので。。。
今日のところは姉とわたくしとでよろしいでしょうか?」
「あ、はい。そ、そうですね。」
オレは完全な理解はできないままそう答えた。
「場所はどうなさいますか?
ここですと、お風呂から出た子どもたちが戻ってくると思います。
わたくしどもは構いませんが、さすがに先生はバツが悪いですわよねぇ。
やはりおもてなしルームにご案内した方がよろしいかしら。」
「あ、お、お任せします。」
「そうですか。では、こちらへ。」
ユリカは立ち上がり、オレの手を取った。
ちょうどそこへ麗子によく似た子どもが入ってきた。
風呂から出てそのままなのか、驚いたことに裸のままだった。
「あ、ユリカおねえちゃん。」
「あれ、どうしたの?麻羅ちゃん。」
(麻羅?麗子の姉、か?)
確かに顔は麗子にそっくりだ。
しかし身体の方は姉だけあって麗子よりも一回り大きい。
麻羅はオレに気づくと裸の身体を隠しもせずに、丁寧にお辞儀をした。
「あ、松岡先生、ですよね。麗子の姉の麻羅です。妹がいつもお世話になっています。」
「あ、は、初めまして、松岡です。」
オレはどこを見て返事をしたものか迷いながら、慌てて挨拶を返した。