誇り高き首領妻の熟肢体は白濁汁を浴びて-2
「特に台本ないんで、起こることに身を任せてくれればいいですよ」
照明やカメラが整えられた中、いかにもただ性行為だけが目的という広いベッドに座らされた朱代は、おどおどして周りを見渡した。
我先に襲いかかってくるかと思った梶谷が引っ込んでしまったのも予想外で、より困惑を煽った。
ファインダーを覗くカメラマン兼監督らしい男は、無骨なジャンパー姿で、ただ撮るという職業意識しかなさそうである。
絡みの男優が現れる気配もなく、スタジオの暗幕から時おり漏れてくる隙間風がヒヤリと染みた。
「……じゃ、軽く自己紹介からいきましょう」
カメラマン兼監督が、唐突に喋った。
「ちなみに僕は監督の有馬です。本日はどうぞよろしくお願いいたします」
「あっ、ハイ、よろしくお願いします!」
丁寧に挨拶されたのが意外で、朱代はことさら姿勢を正してお辞儀した。
「緊張しすぎじゃないですか。大きく延びをしながら深呼吸するといいですよ」
朱代はその通りかもしれないと、有馬の言うように数回深呼吸をした。
「落ち着きました? 表情柔らかくなってイイ感じですよ。あ、そのはにかんだ顔とかステキです」
有馬はカメラと朱代を交互に見比べる。朱代を被写体として綺麗に取ることだけ考えているようで、ドライとも言い換えられる職業意識が感じられた。
かえって撮られることへの不安が減り、リラックスしているのを朱代は不思議に受け止めていた。
「そうそう、こっちに目線向けて……改めて、お名前から」
「はい……五条朱代です」
「ご年齢は」
「四十四歳です……」
「ご職業は」
「えっと……極道の妻って職業じゃないですよね。でも専業主婦でもないです……フロント企業の取締役なんかにも名前は連ねてるし」
有馬のぼそぼそとした質疑には、催眠術の如く釣り込んでいく不思議な引力があった。
朱代は当初の緊張を忘れ、饒舌に答えていた。