犬使いの少女-14
そして翌日
夕日が間もなく沈もうとしている頃、俺と珠美はアパートの俺の部屋で再び生まれたままの姿で抱き合っていた。
ベッドに寝転がった二人はすでに数度の交わりによって息を荒くしている。
ベッドの横では珠美の愛犬のチャオが座ってじっとしていた。
「えへへへへへっ」
珠美の手が俺の肩や胸をぺたぺたと叩いてくる。
「……どうしたのさ?」
俺は妙に嬉しそうにしている珠美に不思議そうな目を向ける。
「……ほら、手が届いてる」
「……すぐ横で寝てるんだから当たり前だよ」
俺はこともなげに言ってのけたが、珠美の言ったことは俺にもよくわかる感覚だった。
届かないはずの距離を縮めたのはあの時の珠美の気持ちが俺の気持ちに勝っていたからだ。
いや、もともと少女に抱く幻想を守ろうとしていた俺と現実の温もりを求めて行動していた珠美とでは相手にならない勝負だったのかもしれない。
……とにかく今、俺は珠美の側にいる。
ぺたぺたぺたぺたぺたぺた
「……あの、いいかげんにしてほしい」
「だ〜ってえ……」
「だってじゃないよ。ほら、滅茶苦茶赤くなってきた」
「ちぇ〜っ、ちぇ〜っ、ちぇ〜っ」
ぺたぺたぺたぺたぺたぺた
「だから、やめろって!」
「あはははっ」
……手を伸ばせば叩き放題の距離で。
完