お義姉さん、お先にデビューさせて頂きます……安西浪子の突っ走り-5
浪子は身構えた。
屈強な男どもが寄ってたかって自分を押さえ込み、無理矢理に身体を開いて陵辱にかかるものと思ったのだ。
ところが、入ってきたスーツ姿の若い衆たち数名は、浪子に触れるどころか近寄ろうともせず、黙々と照明や三脚など機材のセッティングを始めた。
反応に困って浪子がキョトンとしていると、第二陣としてパンツ一丁の若い衆がぞろぞろと入ってきた。その数、十名を超えている。立派な彫物を背負った者もいれば、生っちろい肌をつるんと晒している者もいる。人数が増えた室内の温度はいくぶん上昇したようだった。
そのパンイチ連中も、入室して行儀よく整列するだけで、浪子に手を出そうとしない。
「さて、浪子ちゃん?」
梶谷がすぐ後ろに立ち、浪子の首筋に鼻息がかかる距離で話しかけた。
「いかに頭のユルいバカ女でも、今ここで自分がどうすればいいかは分かるよね? 輪姦って言ったけど、マジに力づくで犯しちゃったら俺ら犯罪者になっちまうから、そんな真似は出来ないんだよね。ただ輪姦モノの作品を撮りたいってだけ」
「は? 何言ってるか分かんないんだけど」
困惑の極に達した浪子には、そんな悪態をつくのが精一杯だ。
「ほんっと、パイパイにばっかり養分が行き届いちゃったスカスカ頭でちゅね浪子たんは」
梶谷が思いっきり侮辱の言い方をしてほくそ笑んだ。
「いいでちゅか? 浪子たんはねぇ、合意のもと輪姦プレイを演じなきゃいけないの。もちろん嫌ならサッサとこの部屋から出て行ってもいいでちゅし、俺らはそれを強引に止めることはしまちぇん。ここでおつむプッツンして逃げていくのは勝手……でも浪子ちゃんがそれをしちゃったら、そのぶんのツケはじぇ〜んぶ、大好きな朱代お姉ちゃまに回ることになっちゃうの。分かりまちゅか〜?」
馬鹿にしきった物言いだ。だが、浪子にはその理屈が随分と重くのしかかるようで、反抗的な目つきだったのが見る見る気弱な伏し目へと変じていった。
「その言い方ムカつくからやめろ」
精一杯、虚勢を張って浪子に言えることはそれだけだった。