意地を選んで恥辱にまみれ-7
「それでは、最後にこれは私の個人的な興味からお願いすることなのですが、五条さんがAV出演するにあたって相手方の会社と交わした契約書を見せて戴きたいんです。ここまでのお話から大体のからくりは読めたという気がするのですが、一応、書類もどんな形なのか……スタッフも視聴者も関係ない、私が見てみたいというだけのことなので、どうか」
筑波らしいリクエストだ。
朱代は懐から取り出した長財布を開けると、契約書を抜いた。
えぐるような筑波の質問ですっかり疲弊した朱代であった。
契約書に羅列された卑猥な単語を思い出しただけでも、恥ずかしさのあまり冷静な顔を保てなくなりそうだ。
畳まれたままのそれを筑波へと差し出した。
受け取った筑波は、目を通しながら眉をひそめた。
「この内容は……酷いですね。さすがにテレビで発表する訳にはいかない言葉が並んでいますが……まともに考えて、いくら十億と言われても五条さんが了承の署名をするのはおかしい契約内容で──」
そう言い終わらないうちに筑波の表情は強張った。
何度も契約書の一箇所を見直して筑波は、
「五条さん、本当によく確認した上で署名をされたんでしょうね!」
血相を変え、声を張り上げた。
「このおっさん、ほんまカンがええで。まさか最後の最後にあの契約書確認しよるとはな! はは、あははははぁ!」
狂喜する大谷のハードピストンは最高速にまで昇り詰めていた。
でっぷりした腹が凛子の尻を打ちまくり、その振動が伝わって凛子の小ぶりな乳房も面白いようにタプタプッと震えていた。
「あの……確かにとんでもないことが書かれていますが、全て私は織り込み済みで署名をしたつもりです」
朱代は言った。
「この控えは複写になっています。二枚つづりか三枚つづりか分かりませんが、あなたは全てしっかりと確認しましたか」
筑波の言葉に、朱代は総身の血が引いていく感覚をおぼえた。
まさか、本心を吐露して涙まで見せた梶谷が、契約書に何かするとは思えない。
いや、思いたくなかった。
筑波が差し出す契約書を恐る恐る手にした朱代は、上から順に追っていった。
プレイ内容は、梶谷事務所で読んだ通りだ。
契約者名双方も間違いない。
契約額面は。
「こ、これは……」
朱代は生まれて初めて、目の前が真っ暗になるという瞬間を味わった。
事務所控えの一枚目とはまるで違う文字。
出演料は、一作につき五千円という破格値がそこには印刷されていた。