スケベな身体の四十路ババアはハードコアAVに出ろ!?-4
「姐さん、入ります」
案内も受けずに障子を開けた梶谷に、朱代は鋭い睨みを効かせた。
「待っておきなよ。仮にも親の寝間に上がり込むとは、何様だい」
無作法を咎めたが、
「いえ、その……他聞をはばかることなんで、失礼とは思いましたが」
梶谷はペコペコと頭を下げつつ、後ろ手に障子を閉めた。
武闘派としてかつては勇名を轟かせた梶谷慎作。
四十歳ながらも山勇会の代貸格であり、若さに似合わぬ貫禄もある男なのだが、それが恐縮しきった態度で頭を下げている姿は妙に可笑しかった。
「あんたのとこの若い衆にも言ったけど、変にケジメつけようなんて考えるんじゃないよ。サツに睨まれない程度、ほどほどにやりなってだけさ」
唇に紅を引き、朱代は鷹揚にあしらった。
「へい……それはもう。あの、それで姐さん……話ってのは、別口でして」
「うん?」
「また怒っちゃいけませんよ。冗談半分の話で……姐さん、昼間、電話で仰ってたこと、あれ本気ですか?」
梶谷は照れたような笑いを口元に浮かべながら言った。
「本気かって、何のことだい」
「十億積まれるんなら、そういうビデオに出てもいいって……」
朱代は吹き出してしまった。
「な、なに言ってんのさお前は。あは、あはは……」
笑いが止まらなくなって、腹筋が痛くなるほどだった。
「他聞をはばかるだなんて勿体ぶったこと言って、そんな与太話がしたかったの? おへそが茶を沸かすよ全く……」
「一応本気かどうか確かめたかったんで……もし本当に十億のギャラ出すって言われたら、姐さんどうします?」
「ばっかだねえ。そんな物好きいるもんか。まあ十億も積まれたら、何だってしちゃうかもねえ?」
座興として、気の利いた台詞を吐いてやる朱代だった。
ところが、その瞬間、梶谷の表情が変わった。
「確かに仰いましたね」
キョトンとする朱代の前で、梶谷はスーツのポケットからボイスレコーダーを取り出した。
「言質は取らせて貰いましたよ」
冗談にしては、あまりにも念が入り過ぎている。
「何のつもりなの」
朱代も笑いを引かせ、強く問うた。
「姐さん、どうもありがとうさんでした」
ニヤリと不気味な笑みを残し、梶谷はそそくさと出て行ってしまった。